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2021.09.01 08:00

戦争論もドラッカーも古くない。デジタル時代こそ古典ビジネス論へ

photo by iStock/Patrick Chu


敷居が低く効果てきめんな方法をご紹介しましょう。
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読みあさるよりも「対話」が理解を深める近道


どのような分野にも時代を代表する名著が存在します。詳しい人に聞けば、おそらく経済学分野ではカール・マルクスの『資本論』や、戦略論では、先に挙げたクラウセヴィッツの『戦争論』やマイケル・ポーターの『競争の戦略』などが挙がるでしょう。

このどれも一般向けの書籍とは異なり、専門用語や抽象的な概念が満載です。最後まで読み通し、正しく理解するのは至難の業です。

そこでまずお勧めしたいのが、話し相手になってくれるアシスト役を見つけることです。
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みなさんのまわりに、経済学やビジネスに詳しい先輩や友人はいませんか。もしいればその人はあなたにとって一生の宝です。1章読み終えるたびに分からなかった点、疑問に思った点を抜き出し教えを請うだけでも理解のスピードは格段に速くなります。思い当たる人がいたら、臆せず話を持ちかけてみてください。難解な話題は相手を選びます。あなたから声をかけることで、喜んで教えてくださる方はきっといるはずです。

かくいう筆者も自分がかじった知識を相手に補完してもらうことで定着した知識がほとんどです。先日も訪問先の企業の役員から「学生時代に『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を読んだ」と打ち明けられ、会議の時間の大半を使ってマックス・ヴェーバーについて教えてもらい、先方の打ち合わせの時間を奪ってしまいましたが、また一つ私の理解が深まりました。

理解が難しかった部分について意見を述べるなどアウトプットすることで脳が活性化されることは科学的に解明されています。さらに自分と異なる意見や解釈に触れることによって、一人で難解な文章と格闘するよりもはるかに理解が深まるはずです。

実際、筆者のお客様のなかに、社内で資本論を読み解く読書会を立ち上げ、自分の理解を深めるとともに、付随的に経営者との距離を縮められたという方がいらっしゃいます。これも一人で黙読しているだけでは得られない効果といえそうです。

さらにもう1つお勧めがあります。努力して身に付けた知識を実際に使ってみることです。経営戦略論を現実に当てはめてみることは、非常に有意義なエクササイズになります。

もちろん自分が携わっているビジネスに適用するのがベストですが、もし難しければメディアの注目を集める話題の企業の分析に用いてみても構いません。上場企業であればIR情報も公開されていますし、インターネットや書籍などから、社史や事業戦略、ライバルとの関係といった周辺情報を集めることも容易です。

まずは、どの戦略が当てはまり、どの戦略論が当てはまらないかを見極めるだけでも結構です。成否を問うクイズではありませんから、正解を当てにいくというよりは、自分なりに仮説を立てて検証することを楽しみましょう。知的好奇心を刺激するエクササイズを繰り返すことによって、経営戦略論は徐々にあなたの体に染み渡っていくでしょう。

日本のビジネスパーソンは、サブスクリプションビジネスや共創プラットフォーム、エコシステムの重要性など、戦術についてはよくご存じの反面、普遍的な概念や知の体系化に疎い面があります。即効性のある実利を追い求めるあまり、時を超え世界の英知がつまった経営戦略論を顧みないのはあまりにももったいないと言わざるを得ません。

私もミドルマネジメントクラスの方々の日常がいかに忙しいかよく知っています。しかし、現場で身につけた感覚に磨きをかけ、ブラッシュアップすることに少し時間を割いてみてはいかがでしょうか。

やがて次代の経営を担うであろうみなさんが、学びを深めるために一歩を踏み出してくださることに大きな期待を寄せています。


【連載】今までにないアプローチでデジタルを理解する

#1:戦争論もドラッカーも古くない。デジタル時代こそ古典ビジネス論へ

保科氏の社h心
中村健太郎
◎アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテク アジア太平洋・アフリカ・中東・トルコ地区統括 兼 航空飛行・防衛産業 日本統括 マネジング・ディレクター。フューチャーアーキテクト、ローランド・ベルガー、そしてボストンコンサルティンググループを経て、2016年にアクセンチュアへ参画。全社成長戦略、新規事業創造、デジタル、組織・人材戦略、M&A戦略、等の領域において、幅広い業界のコンサルティングに従事。

文=中村健太郎(アクセンチュア)

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