南:世の中は、すごいスピードで変化しており、特に働き方の変化は、目まぐるしいです。「この会社で働くことによって、何を得られるか」「この会社で働くことで、自分の市場価値が上がるかどうか」。経営者は労働市場を意識したうえで、社員が経験・スキル・知識を伸ばすための投資をしていかなければなりません。これから先、働き方が多様化していく中で、社員の根っこにあるシンプルな問いに気づき、応えられるかが重要になっていくでしょう。
なぜなら「人生100年時代」という言葉に表されるように、統計学的に平均寿命は伸びていて、僕らの世代は100歳まで生きることが現実的な世の中になってきているからです。ということは、当然、働く期間も長くなるわけで、今の30~40代は、80歳〜85歳まで働くことになるでしょう。僕は今45歳ですけど、まだ37年ぐらい残っている。
このような変化をみてわかるように、今後の働き方は、これまでの延長線上にあるとは考えにくいわけです。今後どんな変化が起きるか分からないけれど、それに備えて、自ら学び、自ら変わり続けようとする人が自然と増えていくと思います。
これからの人が会社に求めるのは、「学ぶ場」だと思います。会社は「自分の価値を高める場」となっていくのではないかというのが、僕の見立てです。結果的には、学びと価値向上を実現できる会社に優秀な人材が集まり、実現できない会社からは人材が流出していく。経営の優劣に直結する重要な経営指標になっていくでしょう。
辻:社員の成長する機会をつくるのが、社長や経営陣の役割というのは僕も同じ意見です。人間は経験を積むことが一番の成長だと思っていて、その機会をできるだけ多く提供したいと思っています。
僕自身も、28歳の時にマネックスに入社して、50人から1000人まで急成長する時代を経験しましたが、その時の学びが今の自分を形作っています。ですから、普通の企業なら10年かけて得るような経験を、マネーフォワードでは数年でできるという環境を提供したいですね。
マネーフォワード社長 辻庸介
この仕事頑張ったら、世の中良くなるんだっけ?
辻:これからの会社は、フェアであることも大切になると思っています。例えば、メジャーリーグで大活躍しているエンゼルスの大谷翔平選手が年功序列だったら、まだベンチで控えですよ(笑)。あれだけホームラン打って活躍するのに。
でも、現実に大企業ではそういうことが起きているのではないかと思います。マネーフォワードは、性別や年齢、国籍などに関係なく、結果を出した人が新しい、面白いチャンスを掴める場にしたいと思っています。力のある人は、入社数年であっても責任ある仕事は全然できるんですよ。
あとは、世の中をよくするという姿勢も求められると思います。「この仕事頑張ったら、世の中良くなるんだっけ?」ということに目配りできるかということですよね。
SDGs(持続可能な開発目標)の機運の高まりもありますが、自分の仕事がどのように社会課題を解決しているのかという点は、これからさらに注目されていくでしょう。特に、僕らは金融という領域で事業をやっているので、社会課題と直結している分野が多々あります。だから、社会課題の解決を通して、少しずつでも世の中を前に進めることに役立ったらいいなと思っています。
まあ、最終的には「このリーダーについていってハッピーになれるのか」を社員はみんな冷静に見ていると思うんですよ。リーダーはいつも試されていますよね。