米国で増加する「多職者(ポリワーカー)」、その原動力は

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50年か60年くらい前の職業人生は、今よりずっと単純だったように見える。実際のところは、どんな時代であれ見た目ほど簡単ではなかったのだろうが、当時は大卒者の多くが、まずは初歩的な職につき、引退するまで同じ会社で仕事を続けていた。

いまは様相が異なっている。大卒者の40%超が、大学の学位を必要としない仕事につく。卒業から5年後も、3分の2は依然として大卒資格が不要の職についている。専攻とほとんど関係のないキャリアを進んでいる大卒者は、4人に1人を超える。

それは問題ない。キャリアコーチである私がたどった道も、間違いなくあまり一般的なものではなかったし、私が追い求めた情熱も、やはり自分の専攻には直接つながりのないものだった。

大卒者の多くは、多額の学生ローンを背負っている。したがって、生活を維持するためだけに、2つか3つの職(もしくは副業)を掛け持ちする必要に迫られることも珍しくない。そのいっぽうで、毎月の支払いに苦労しているわけではなく、別の理由から、複数の職を持つ人たちもいる。

必要に迫られてではなく、自ら望んで複数の仕事を掛け持ちすることを選んだ人は、「ポリワーカー(polyworker:多職者)」と呼ばれている。この独特なワークスタイルの支持者たちによれば、ポリワークのプロは、複数のキャリアを持つことを好むという。つまり、自分の専門分野でひとつの仕事を手に入れようとするのではなく、さまざまに異なる(だが多くの場合は補足しあう)職につくということだ。

ポリワークの実践者は、失職による壊滅的な損害から守られていると感じている。なぜなら、常にバックアップとなる仕事があるからだ。

退屈することもない。そして、柔軟さと自由を謳歌している。

もちろん、ポリワークをめぐる真実は、それほど単純ではない。では、ポリワーカーとは、いったいどのような人たちなのか? そしてこのトレンドは、雇用主と雇用にどのような影響をもたらすのだろうか?

意外な変化


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックは、極めて多くの人にとって、雇用に対する見方を根本から変える出来事だった。オフィス勤務からリモートワークへ切り替わった2020年の急激な変化に、これまでよりも良い働き方を見つけたと確信した人も多かった。そうした人たちは、柔軟さと自由を好む。通勤がなくなったおかげで生まれた余分な時間とお金については言うまでもない。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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