「自然消失」と「気候変動」の取り組みをより連動させるべき理由

自然消失問題への取り組みをいまこそ(Unsplash)


NbSは、排出量削減と、避けられない未来の衝撃に対するレジリエンス(強靭性)向上の両方に貢献します。NbSは、地球温暖化を2°C以内に抑えるために2030年までに達成が必要な37%の二酸化炭素削減を、他の選択肢よりも低コストで実現することができます。

唯一の二酸化炭素吸収源である海洋・陸上エコシステムは、世界中で人間の活動により排出される二酸化炭素の約60%に相当する量を吸収する力を持っていますが、更なる可能性も秘めています。同様に、湿地や森林は干ばつ時の水供給の確保に、木々は猛暑のなかの都市の冷却に、マングローブは水害に対する沿岸部の保護に役立ちます。

自然への投資により、2030年までに3億9500万人分の雇用が創出できること、そして、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が人類と環境の関係をリセットする前例のない機会をもたらしたということが、調査により明らかになりました。近い将来、市民、企業、各国政府が下す決断が、数十年先までの世界を形作ることになります。

復興のための一連の取り組みは、公共の利益にならず有害な結果をもたらす助成金の廃止や、グリーン・ジョブ(環境への負荷を持続可能な水準まで低減させながら事業として採算が取れる仕事)に必要なトレーニングやリスキリング(新たな学び・研修)への支援など、強力なアクションと組み合わせて進めなければなりません。最近の研究では、気候変動や生物多様性の減少への対処に、官民を問わず1ドル費やすごとに最大7ドル相当のリターンが得られることがあることが分かっています。

世界経済フォーラムは、気候変動および自然の問題への取り組みの連携強化をしています。「チャンピオンズ・フォー・ネイチャー」のコミュニティは、レジリエントな経済と公平な社会を実現するため、総合的な土地および海洋管理を促進しています。また、同フォーラムの「ネイチャー・アクション・アジェンダ」も、温室効果ガス排出と生物多様性消失の最大の要因である、都市システムと食料システムにおいて、ネットゼロかつネイチャーポジティブな変革を推進する2つのイニシアチブ「100ミリオン・ファーマーズ」および「バイオダイバーシティーズ・バイ2030」を立ち上げました。

気候変動との闘いにおいて、自然は重要な存在です。自然の消失と気候変動を同時に対処することは、環境、経済、健康への更なる打撃に直面している私たちのビジネスや雇用に大きなメリットをもたらします。ネットゼロでネイチャーポジティブな経済は、将来パンデミックが起こる可能性を減らすだけではなく、将来の危機に対する備えとなるのです。

気候変動の危険性に対する意識は、これまで以上に高まっています。パンデミックにより人々が家に閉じこもることを強いられ、かつてないほど自然への憧れや繋がりを持つようになりました。私たちはこの教訓を忘れず、地球規模課題に対する解決策を早急に選び取らなければなりません。

自然界を持続不可能なものとして単純化するのではなく、自然界との複雑な調和から学ぶのです。政策立案およびビジネス戦略には、いまだ気候変動や自然への視点が十分に盛り込まれていませんが、メッセージは明確です。私たちの社会と経済が、これからも長く続いていけるかどうかは、それにかかっているのです。


(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Marie Quinney, Specialist, Nature Action Agenda, World Economic Forum

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