トレーラーハウスでお葬式? コロナ禍でも変化する供養の形

なぜ葬儀や供養の形に変化がみられるのか(Shutterstock)


できれば葬儀の費用は抑えたいという遺族の本音が、多人数での集まりが禁止されるコロナ禍の状況とも相まって、直葬を加速させているという。ちなみに家族葬にかかる費用は平均して50万円から、直葬では約15万円、トレーラーハウスでの葬儀は25万円前後の想定だ。

「直葬は基本的にご遺体と面会できず、最後のお別れも火葬する前の数分になってしまい、あまりにも寂しいなと。少し費用を足していただくことになりますが、トレーラーハウスでの葬儀なら、家族だけで最後の時をゆっくり過ごしてもらうことができます」

葬式
トレーラーハウス イメージ(Shutterstock)

この新しい形での葬儀は、葬儀社にとっても利点があるという。

これまでは遺体の安置所の管理や遺体搬送の手続きなどを行うため、葬儀社で働くには夜勤があることが前提だった。しかし労働基準法が厳しくなったことで、こうした働き方にも改革が求められ、頭を悩ます葬儀社も多い。

トレーラーハウスは通常の葬祭場や葬儀会館とは異なり、鍵をもった遺族が自由に遺体を安置している会場に出入りできるため、24時間体制で安置所に職員を配置する必要がなく、労働時間の問題や人件費の削減にもつながるという。

樹木葬や永代供養 変化する人々の意識


トレーラーハウスでのそれのように、葬儀の形も変わってきているが、最近では人々の供養への意識にも変化が見られる。

日本最大級のお墓の総合情報サイト「いいお墓」を運営する「鎌倉新書」が行った調査では、2020年の1年間で、同社で購入されたお墓の種類で最も多かったのが、「樹木葬」だった。一般墓を購入した人の割合が26.9%に対し、46.5%の人が樹木葬を選び、2年連続で樹木葬の需要は増えているという。

樹木葬というのは、従来のような大型の墓石を置かず樹木の周囲に遺骨を埋葬するお墓のことだ。遺骨を埋葬するだけのため費用が抑えられ、さらにお墓を護る跡継ぎを必要としない「永代供養」であるという利点がある。永代供養とは、寺院や霊園などの管理者が責任をもって将来にわたりお墓を護ってくれるもので、近年ではこのシステムの供養を選ぶ人が増えているという。

先述の調査でも樹木葬を選んだ人の声として「お墓を継ぐ人がいない」ことが挙げられたほか、一般墓と比べると費用を抑えて購入できることも背景に見ることができる。田中は新しい供養のスタイルを選ぶ人が増えている現状について、こう語った。
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文=河村優

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