ビジネス

2021.08.18 07:00

メイド・イン・アメリカの誇りをよみがえらせた「製造業の星」

中国に頼らずに高品質・低価格を実現し、しかも大いに儲ける方法とは? アメリカ南部にある太陽光発電部品のメーカーの成功戦略を紐解く。


ショールズ・テクノロジーズが本拠を置くテネシー州ポートランド。この地に構えるおよそ1000坪の工場をはじめ、隣のアラバマ州など4カ所にある工場で、同社は太陽光発電設備の心臓部、すなわちケーブルアセンブリ、コンビナ、外付けヒューズなどを製造している。

こんな「セクシーではない産業」は、とうの昔に中国にもっていかれたとばかり思っていた。

実際、ショールズのライバルは中国企業ばかりだ。中国製の部品はたしかに安い。しかしショールズは、安全性と信頼性、そして設置のしやすさで、圧倒的な支持を得ている。余計な労力やメンテナンスコストをかけずに済むなら、5%や10%高くても、ショールズ製品を選ぶということだろう。ショールズは昨年、1億7600万ドルを売り上げ、3400万ドルの利益を得た。今年1月にIPOを実施した結果、57歳の創業者ディーン・ソロンは22億ドルの資産家になった。

メイド・イン・アメリカという贅沢品を低コストで提供し続けるため、ソロンは製造工程をできる限り明快にしている。ワイヤーの圧着やヒューズの取り付け、ケーブルアセンブリの仕上げなどの作業手順は、各機械の前面に設置した画面にスクリーンに表示される。工数は時間単位ではなく秒単位で計測する。

取引先である太陽光発電所の所長は、ショールズの製品について「常に最も安いというわけではないが、常に最も優れている」と評す。他社製品を導入したこともあるが、どれも例外なく保証期間内に故障してしまったという。

ソーラー革命は、始まったばかりだ。太陽光発電は米国で最も急速に成長している発電形態で、2020年の太陽光発電量は25%増の130GWhに達した。しかも、1KWhあたり3セント以下と、最も安価な新電力なのだ。それでも、再生可能エネルギー(水力発電を除く)の国内総供給量に占める割合は、12.5%にすぎない。バイデン大統領は、35年までに「ゼロカーボン」電力の目標を設定しており、太陽光発電関連事業の需要はさらに高まると期待されている。


ディーン・ソロン◎ショールズテクノロジーズ創業者。1965年生まれ。米パデュー大学中退。自動車の部品販売や修理工などの仕事を経て、96年にショールズ創業。2019年に同社CEOを退くが、取締役会に残り新製品の開発に注力。40%の株式を保有し、資産額22億ドル。ソロンは30件の特許を取得しており、うち1件は発明者登録されている。

文=クリストファー・ヘルマン 写真=ジャメル・トッピン

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