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最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介

ブラジルから生まれたユニコーン企業ヌーバンクは、コロナ禍を追い風に大躍進。人口2億人の大国相手に、外国人フィンテック起業家はなぜ業界破壊に挑んだのか。


「ブラジルの銀行はクソだ。これまでもそうだったし、これからもそうだ」
 
コロンビア人のダビド・ベレスに、ブラジル人の友人はこう吐き捨てた。2012年に米スタンフォード大学でMBAを取得したベレスが、セコイア・キャピタルのパートナーとしてサンパウロに赴任していたときのことだ。その当時、ブラジルではブラデスコ銀行など5大銀行が市場の8割を支配し、高い貸出金利で巨額の利益を得ていた。

だが、インターネットとスマホがこの巨大な国に急速に普及していくのを目の当たりにしていたベレスは、この市場にチャンスを見出していた。

「業界をぶっ壊す機会はいくらでもあったのに、誰もが目を背けてきただけだ」

起業のアイデアを探していたベレスは、ブラジルの大手銀行に狙いを定めた。高額な手数料、最低のサービス、新しい技術に無頓着なことで有名な銀行は、格好のカモになる──。

ベレスは欧米の新興デジタル銀行を研究し、新しい銀行「ヌーバンク」の青写真を描いた。ブラジルでは外国人の銀行所有が憲法で禁じられていたので、まずはクレジットカード会社としてスタートする。カード申請から請求書までアプリ内で完結させ、年会費は取らない。魅力は明らかだ。
 
そんな銀行をつくれば殺される、子どもが誘拐されると警告されたが、ヌーバンクは14年に1500万ドルの資金調達を得て、クレジットカード販売にこぎつける。折しもブラジルを経済危機が襲い、既存の銀行は窮地に陥る。その間にヌーバンクはみるみる成長を遂げ、新型コロナウイルスの影響で利用者はさらに拡大。19年には5億2300万ドルの収益を上げ、ロックダウンと恐怖から多大な恩恵を受けるかたちとなった。
 
こうして設立から10年もたたないうちに、ヌーバンクは3500万人の顧客を獲得し、企業評価額は250億ドルに達した。米金融大手キャピタル・ワンの創業者ナイジェル・モリスは言う。

「ブラジルで起きていることは、真の革命にほかなりません。長年ふんぞり返ってきた銀行の目を覚まさせたのですから」


ダビド・べレス◎ヌーバンク共同創業者兼CEO。1982年、コロンビア生まれ。米スタンフォード大学卒業後、モルガン・スタンレー、セコイア・キャピタルなどに勤務。2013年、2人の共同創業者とともにサンパウロでヌーバンクを設立。現在はメキシコ、コロンビアに事業を広げ、普通預金口座も提供。ベレスの保有株式23%の評価額は52億ドル。

文=ジェフ・コーフリン  写真=ガブリエル・リナルディ

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