必要なのはバランスの取れたアプローチ
小売業者は新技術の導入を完全にやめるべきではないものの、もっと計算されたアプローチを取ったほうがよいかもしれない。単に目新しいからといって新技術に飛びついてしまうと、客は圧倒され、混乱してしまう。
技術の最適な活用方法は、顧客のニーズに応え、円滑で便利な体験を提供するものだ。新技術導入には、ただアーリーアダプター(早期導入者)になりたいというだけでなく、戦略的な理由がなければならない。
コロナ流行が収束すれば、実店舗でのショッピングを再開する人は増える。客が実店舗での買い物体験にテクノロジーを求める最大の理由は、節約と安全性だ。イスラエルの重量計メーカー、シェケルの調査によると、米国人で現在、店舗での非接触型の支払い方法を好む人はなんと87%に上っている。客はさらに、店舗への新技術導入で実現できるパーソナライゼーションや利便性を求めている。
客が店内の技術にそれほど関心を持っていないからといって、ネットと実店舗のショッピングの境界線を曖昧にするオムニチャネルな小売に需要がないわけではない。
そのため、客が新技術に対して消極的な言葉を口にしても、店側は技術の導入をやめるべきとは限らない。重要なのは、客に合った技術を取り入れ、その価値を示して、客が慣れるまでに時間がかかることを受け入れることだ。
テクノロジー主導のショッピング体験は、小売業の未来の姿であることには変わりがないかもしれない。ただしそのためには、こうした技術を戦略的に導入し、客により良いサービスを提供することを念頭に置く必要がある。