世界感情調査が示す、幸福感の低下と2020年という最大のストレス

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家族を持つ人たちは、ウイルスに感染した愛する人に、家庭内で対応することを余儀なくされ、数十万にのぼる米国人が命を落とした。家族でさえ葬儀に出ることは許されず、教会や礼拝堂で行われる宗教儀式への出席も禁止された。

職を失った人は驚くほどの数にのぼり、記録更新レベルに達した。多くの州で学校が休校になり、子どもたちは、不具合の頻発するオンライン学習に耐えることを強いられた。仕事を持つ多くの母親は、キャリアと家族の世話をどうにかやりくりするストレスにさらされた。子どもに注力するために、仕事をやめる決断をした人も多かった。高年齢の労働者では、職を見つけられなかったり、仕事をあきらめたり、早期退職に追い込まれたりするケースもあった。

米国民の大多数が苦しみにあえいだ一方で、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ、イーロン・マスクといったビリオネアは、億単位の金を銀行口座に上積みした。経済は均等に回復するのではなく、K字経済の様相を呈した。「K」の字の上へ向かう線はもともと豊かだった者の富の軌跡を、下へ向かう線はそれ以外の社会を表している。

一方、ギャラップの報告書は、過去10年で、憤り、不安、不満が醸成されてきたことも指摘している。ギャラップは、「政治・経済的動揺」がしばしば、「否定的感情の高まりを背景にした歴史的な」ものであることを指摘している。「世界規模の飢え、自由の欠如、汚職の増大や収入格差の増大」という組み合わせの台頭が、人々に不満と不安を抱かせているのだ。

ギャラップの報告書は、アン・ケースとアンガス・ディートンの著書『絶望死のアメリカ──資本主義がめざすべきもの』(邦訳:みすず書房)について触れ、「自殺とアルコール中毒、オピオイド過剰摂取が組み合わさった死亡が主要因となって、米国における平均余命、特に大学学位を持たない白人男性の平均余命が全国的に短縮しているという驚愕の知見に光を当てている」と紹介している。

『絶望死のアメリカ』では、「前述したような死因の影響をもっとも大きく受ける地域は、米国のなかでも人々がもっとも身体的苦痛を訴えている地域に重なっていること」が浮き彫りにされているが、ギャラップの報告書では、指標のひとつとしてこの身体的苦痛を用いている。

だが、悪いことばかりではない。現在の米国は、グローバル・エモーションズ・リポートの調査が行われた後に発生した新型コロナウイルスのデルタ株との闘いのさなかにあるものの、2021年6月に行われたギャラップの別の調査はこう述べている。「2021年の米国では、多くの人が自身の生活が回復していると評価しており(史上最高を更新)、感情の状態はパンデミック前の水準に戻っている」。

この調査によると、現在の自分は「うまくいっている」と回答した米国人の割合は2021年6月には59.2%に達し、「調査を続けてきた13年間で最高」となっている。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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