世界トップはスウェーデン 公的機関でオーガニック食品39%の秘密

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スウェーデン政府は、2006年に初めて公共調達有機食品比率の目標数値を掲げた。それは当時6%だった数字を4年後に25%にするという極めて野心的な数値だった。目標年の2010年までには到達しなかったが、その3年後の2013年には25%を達成。2017年には「2030年までに公共機関の食品を60%オーガニックにする」という新目標が設定された。

政府が設定した目標はあくまでガイドライン的なものであって、各自治体に達成義務はない。しかし、“お上”が宣言することで地方自治体が追随しやすい環境をつくり出している。

フレーマン氏は、「国家目標があることで、各自治体が独自の目標設定を容易に決定できるようになります」と述べ、「2020年の当団体の調べによると、自治体が定める独自目標の半数近くは、国家目標の数値と重なるように作られていることがわかっています」と加えた。

エコフードセンターによる調査でさらに明らかになったのは、自治体が独自に設定した目標の高さと達成率の高さが比例することだ。つまり、高い目標を掲げた自治体ほど、より多くのオーガニック食材を学校や病院で導入することができているという。

公的調達有機率の目標とその達成率:各自治体の目標数値(青)と実際の達成率(緑)、赤点と青点はトレンド(2020) 図提供:Ekomatcentrum

学校給食や病院食の有機化で大きな障害となるのが予算だ。しかしこれまでスウェーデンは予算内でそれを実現してきた。

実際のところ、現行の献立1kgを10%オーガニックにするとコストが約332円になるのに対し、有機比率を55%まで押し上げても同約357円と25円しか増加しないというのだ。

「予算を上げずにオーガニック食を学校や病院などで導入するには、献立の工夫、調達から消費するまでの一連のプロセス見直しが必須です。肉や魚などのいわゆる高価な食材を減らし、根菜や豆などの安価でかつ健康的な食材を増やすことで、予算を維持する事が可能になります」とフレーマン氏は言う。

スウェーデンでは、今までのプロセスを全て見直し、コスト削減のための工夫を徹底して行ってきた。フレーマン氏が指摘する「肉や魚の量を減らし野菜や豆類を増やす」の他にも、「旬な食材を活用する」「調達、調理、配給、消費それぞれのポイントで食品ロスを減らす」「地域の生産者から調達する」などがその例だ。

結果、コスト削減だけではなく、栄養価がより高く、より安全で、より健康な食事が学校や病院などで提供でき、ゴミ削減や人々の意識改革までできるようになったという。
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文=レムケなつこ

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