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2021.08.13 07:00

EVメーカーFiskerを悩ませる「自動車の直販禁止」という法律

フォックスコンのウィスコンシン州マウントプレザントの工場起工式に出席したトランプ前大統領(2018年6月)(Photo by Andy Manis/Getty Images)

フォックスコンのウィスコンシン州マウントプレザントの工場起工式に出席したトランプ前大統領(2018年6月)(Photo by Andy Manis/Getty Images)

米国のEV(電気自動車)メーカー「フィスカー(Fisker)」は、フォックスコンのウィスコンシン州の工場で、新たなEVを生産する計画だが、ここで障害となるのが同州が定める法律だ。ウィスコンシン州は自動車ディーラーにしか車両の販売を認めておらず、メーカーが直接、消費者に車両を販売することを禁じている。

ロサンゼルス本拠のフィスカーは、フォックスコンが開発した新たな車両アーキテクチャを用いて「PEAR」(パーソナル・エレクトリック・オートモーティブ・レボリューション)と呼ばれる大衆向けEVを設計した。同社は、この車両の製造拠点としてフォックスコンのウィスコンシン州マウントプレザントの工場を含む、少なくとも4カ所を検討していると5月に述べていた。

「私としては、消費者に直接、クルマを販売できない州で車両の製造を開始したくない」とフィスカーのCEO兼共同創業者のヘンリック・フィスカーは述べている。

フィスカーは、テスラと同様にウェブサイトや直営店を通じてEVを直接消費者に販売したいと考えている。しかし、米国では多くの州でディーラーのグループが政治的影響力を行使し、メーカーによる自動車の小売りを規制してきた。イーロン・マスク率いるテスラは、直営店を展開するために10年近くにわたり、ウィスコンシン州をはじめとする各州の議会と闘ってきた。ミルウォーキー州にあるテスラのショールームとサービスセンターでは、今でも販売が認められていない。

それでもなお、テスラは自動車メーカーによる車両の直販が禁じられているテキサス州のオースティンに新設する工場で、モデルYとサイバートラックを製造しようとしている。

フィスカーがテスラと異なるのは、車両の生産を自前で行うのではなく、製造パートナーに委託する点だ。同社の電動SUV「オーシャン」の生産は、オーストリアのグラーツにあるマグナの組立工場で2022年後半に始まる予定だ。価格は3万8000ドルほどで、予約台数は年内に2万5000台、来年の生産開始までに5万台に達する見込みという。

PEARはより小型で都市向けのEVで、価格は税控除前で3万ドルとなっている。フィスカーはPEARの詳細な画像や機能を公開していないが、2023年後半の生産開始を予定している。フォックスコンは年間15万台を生産する計画だが、工場の場所はまだ決まっていない。

打開策を期待


「我々は、自動車販売に関するウィスコンシン州の法律に異議を唱えた。州が打開策を検討することを期待する」とフィスカーは述べた。

フォーブスは、ウィスコンシン州経済開発公社の広報担当であるDavid Callenderにコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。

フォックスコンは、2017年にウィスコンシン工場の建設を発表した際、同州から40億ドルとされる税優遇措置を受けることで合意していた。同社は当初、100億ドルを投じて液晶パネル工場を建設し、最大1万3000人を雇用する計画を発表していたが実現せず、工場は無用の長物と化していた。4月にフォックスコンとウィスコンシン州は工場の規模を大幅に縮小し、税優遇措置を減額することで合意したが、新たな計画の詳細は公表されていない。

ウィスコンシン工場は、米国における自動車や関連部品の製造の中心地から近く、輸送ネットワークやインフラへのアクセスも良く、フィスカーは工場の立地条件として最適だと考えている。

「ウィスコンシン工場は単独の施設ではなく、工業団地だ。現地の光ファイバーケーブルなどのインフラも非常に素晴らしい」とフィスカーは述べている。

編集=上田裕資

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