企業価値100億ドルのデカコーン「Figma」が担うデザインの未来

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今年4月、デザインソフトウェア企業「Figma」の共同創業者でCEOのディラン・フィールドは、10年近く前にブラウン大学を飛び出して以来、最も慌ただしい一日を過ごした。

Figmaのツールは、エアビーアンドビーやBMW、Zoomなどの企業に採用されているが、同社はその日、オンラインで開催したカンファレンスで、2番目のプロダクトである「FigJam」を発表したのだ。さらに、その数時間後に妻のエレナが、第一子を妊娠していることが分かったという。

29歳のフィールドはここ2年ほどの間、一日の大半の時間を、ユーザーの声に耳を傾けることに費やしてきた。カスタマーサポートの履歴や、営業担当者からのフィードバック、ツイッター上の顧客の意見を熟読した彼は、昨年秋に新たな計画をまとめた。

Figmaのメインプロダクトは、デザイナーたちがリアルタイムでビジュアルを作成するための仮想キャンバスだが、初期のアイデアを図示したり、フローチャートを作成するためのツールはこれまで無かった。そこで新たに考案されたFigJamは、オフィスの壁に貼られた「デジタル版のポストイット」の役割を果たすことになる。

2016年に正式版がリリースされたFigmaは今では数百万人のユーザーを抱え、フォーブスがクラウド分野の有力企業を選出する「Cloud 100」で、今年の7位にランクインした。同社の2020年の年間経常収益は7500万ドルだったが、今年は2倍以上に伸びると関係筋は予測している。

ジョー・バイデン大統領の選挙キャンペーンでは、すべてのビジュアルアセットがFigmaで管理されていたことも話題となった。

Figmaは今年6月のシリーズEラウンドで2億ドルを調達し、評価額が100億ドル(約1.1兆円)のデカコーン企業となった。フォーブスは、同社の株式の約10%を保有するフィールドと共同創業者のエヴァン・ウォレスの保有資産を、10億ドル弱と試算している。

Figmaのミッションはごくシンプルなもので、Google Docsがワードプロセッシングに、GitHubがプログラミングに果たした役割を、デザイン分野で再現しようとしている。「経済全体がフィジカルからデジタルに移行する中で、デザイン分野でも最新の取り組みが進んでいる。デザインは団体競技であり、コラボレーションに支えられている」とフィールドは話す。
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編集=上田裕資

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