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2021.08.12 08:30

創業3年目の楽器シェア「atsumari」 立ちはだかる課題の突破口


「学生時代に音楽を始めたが、社会人になって時間がなくなり辞めてしまう人は多い。そういう人に家に眠っているものを出品してもらい、新しく楽器を始めたい人につないでいけたら」と木附は話すが、個人からの出品は多くても2〜3点。

楽器シェア木附篤人
CEO木附篤人(撮影=林孝典)

突破口となるのは、一度に多くの出品が期待できる店舗との提携だ。atsumariは、楽器店から下ろせる体制を整備しようと、店舗への営業をかけている。

現在提携しているのは東京の小・中規模の楽器店。ここからさらに増やしていくことが急務となる。

ギターなど売れている商品の場合、楽器店は「わざわざシェアリングに出す必要がない」と判断することもあるというが、カポラリは「貸し出して不具合が起きた場合の修理費用は弊社が負担するので、楽器店が保険をかける手間はない。出品するだけで顧客を獲得できる」と店にもメリットがあると考えている。

一方で、サービスのリーチ拡大にも動いている。昨年9月には、小田急電鉄が運営する「ONE(オーネ)」と提携。オーネでは1つのIDで、お釣りで投資の「トラノコ」や傘シェアリングの「アイカサ」など、さまざまなサービスを使うことができるプラットフォーム。

オーネを介して小田急百貨店の利用者など、年代の高い層にリーチすることで、楽器の出品や買い取りを見込んでいる。

ゼロから音楽を始められるプラットフォームに


今回、バイオリン経験のある筆者が実際にアプリを利用してみた。アプリの操作性はとてもシンプルで、運転免許証やクレジットカードなど個人情報を入れたら後は借りたい楽器を選ぶだけ。出品が全て楽器に置き換わったメルカリといったイメージだ。

楽器シェアアプリ
atsumariのアプリ画面(筆者撮影)

選んだのは、2020年に製作されたバイオリンで、レンタル費用は1週間3000円。シェアの予約をすると、出品者とメッセージをやりとりし、受け渡し場所や日時を決める。配送も可能だが、音楽人同士が繋がれるように基本的には手渡しが推奨されており、今回は、バイオリンを製造した職人本人も在籍する代々木の楽器店で受け取った。

約10年ぶりに演奏をしたが、一度経験した楽器ということもあり気軽に再開するきっかけになった。期限が来ると、双方が都合の良い場所で返却。その後互いに評価をつけて取引は終了する。

楽器によっては、マンションで音を出すのが難しいなどハードルもあるがatsumariはその障壁の解消も見据えている。

「楽器のシェアがクリアできれば、今度は弾く人と教える人のレッスンプラットフォーム作りや、演奏できる空きスペースのシェアを展開していきたい。atsumariを使えば、楽器も場所もゼロの状態から音楽がスタートできるようにするのが目標です」

文=露原直人 撮影=林孝典

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