1千ドル支給、「インフルエンサー軍団」動員も 米国のワクチン推進策

ジョー・バイデン大統領(Getty Images)

人々に気乗りしないことをさせる方法としては、叱ったり、おだてたり、圧力をかけたりといったことができる。ただ、人は他人から指図されることを嫌うため、こうしたアプローチは逆効果となることが多い。時には、金で釣ったり、若者が踊る動画を見せたりすることが、人々の考えを変えることもある。

米国では、マスメディアが新型コロナウイルスワクチン未接種者に対して厳しい批判を繰り返しているものの、あまり効果は上げていない。成人の7割が少なくとも1回の接種を受けたが、所定の回数をすべて終えた人は人口全体の5割にとどまっている。7月に新型コロナウイルス感染で亡くなった人の99%以上はワクチン未接種者だった。

おそらく、米国政府や保健当局から発せられた矛盾したメッセージによって、接種を控えた人もいただろう。米国人は個人主義が強く、大衆に迎合することを嫌う。何かを強制されていると感じると、本能的に拒絶してしまう人もいる。

政界や財界のリーダーたちは、米国人を非難したり悪者にしたりしても効果的ではなく、金に物を言わせるべきだということにようやく気付き始めたようだ。

ジョー・バイデン大統領は各州や地方自治体に対し、接種率を上げる施策として、新たに接種を受けた人に100ドル(約1万1000円)を支給するよう呼び掛けた。米財務省はそのための財源として、コロナ関連の経済対策として出した3500億ドル(約38兆6000億円)の一部を充てられるとしている。

ニューメキシコ州では既にこの報奨金制度を実施した。6月14~17日の間に所定のワクチン接種回数を完了した州民に100ドルを支給するというもので、大きな成功を収めた。1回接種型のジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンは、期間中の接種件数が4倍に増加。2万人以上が期間中に接種をすべて完了させた。

民間企業もこうした取り組みに参加。ウォルマートは、接種を受けた従業員に対して150ドル(約1万7000円)と時給2時間分のボーナスを支給し、副反応が出た従業員には最高3日間の有給休暇を認めた。
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編集=遠藤宗生

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