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美容ジャーナリスト・齋藤 薫さんが「Marisol」で連載中の美と人生への処方箋。続くコロナ禍で、家にいることに慣れた平坦な日々。動いてないのに、何だかぐったりするのはなぜなのだろうか。今回は、「心の動きと老化」について。


そういえば、ずっと旅行していない。海外はおろか国内も。もちろん華やかな会食もしていない。だから「よそいきの服」も着ていない……ただそのことに、みんな慣れてしまってはいないか。

逆にコロナ禍が始まった頃は、あれもできない、これもできない、ここにも行けないと、禁止事項を並べて、自分を無理矢理に家の中に押し込めていたから、どこにも行かない自分に精一杯抵抗し、心がザワザワ落ち着かなかったはず。

でもだからこそ、この時間を決して無駄にしたくないという焦燥感から、断捨離したり、エクササイズしたり、家でフルコースの料理を作ったり、ガーデニングを始めたり。むしろとても活動的だった。何かを始め、やり遂げる時に出るエネルギーが、それまで以上に私たちを活性化させていたかもしれないのだ。ずっと家にいたとしても。

ところが今は、動かないこと自体に慣れてしまい、暮らしも心も平坦であることが当たり前になってしまっている。にもかかわらず、何だかぐったり疲れていたりはしないだろうか。じつはそれ、心も体も動かないからこそ生まれる疲れ。

一方で、ある種の不安はずっと続いているから、脳は疲れている。実はこうした静かな疲れが怖いのだ。肉体的な疲れは休めば癒せるけれど、変化がない日々の平坦がもたらす心と脳の疲れは、じつは肉体疲労よりも、ずっと人を老化させると言われるのだ。心が動かない、とりわけ感動のない日々を生きていると、人はいたずらに歳をとってしまうということ。

だからこそ今必要なのは感動。まぁ不安を感じながらも、オリンピックは必然的にその一助にはなったのかもしれない。とはいえ、それもアッという間に終わり、終わった時の喪失感や虚無感はさらに問題。もっと日常的に心が動く暮らし方をしなければ、人々から輝きが本当に失われていってしまう。

文=齋藤 薫 撮影=John Chan スタイリスト=郡山雅代(STASH)

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