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2021.09.06

「投資して借りて死ぬ」? 富豪たちの節税戦略、大幅増税にも対抗可か

左上から時計回りに、メディア企業「The Atlantic(アトランティック)」の株式を過半数保有するローレン・パウエル・ジョブズ、2013年にワシントン・ポスト紙を買収したジェフ・ベゾス、タイム誌を買収したマーク・ベニオフ、2013年にボストン・グローブ紙を買収したジョン・ヘンリー、2018年にロサンゼルス・タイムズ紙を買収したパトリック・スン・シオン。富豪にとって、大手雑誌や新聞のオーナーになることは成功の証であり、知識人としての公共心を誇示する絶好の機会となる(AP通信社)Getty Images

最近の報道を見ていると、「裕福な」人々は例外なく納税を回避できるように思えるかもしれないが、莫大な税金の請求額に頭を抱える高額所得者の資産家が少なからずいることは間違いない。

毎年納税の時期になると、担当金融コンサルタントから伝授される節税術では飽き足らず、さらに助言を求めて筆者のもとにひっきりなしに電話がかかってくるのにはそれなりの理由がある。

収入額にもよるが、当記事で取り上げる節税対策のなかには一般読者の役に立つ方法もあるかもしれない。ただし、収入や投資額が数百万ドル規模でなければ、手間暇がかかるだけでかえって高くつくだろう。

言うまでもないが、収入の種類によって課税方法は違う。給料をもらっているか、自営業者(もしくは事業主)か、投資(短期であれ長期であれ)で稼いでいるか、株式報酬(ストックオプション、適格自社株購入権【ISO】、譲渡制限株式ユニット【RSU】など)を得ているか、あるいは年金保険、社会保障年金、恩給、企業年金などの退職年金を受け取っているかなど、収入源に応じて変わってくる。また累進課税制度があるので、理論上は稼げば稼ぐほど、税率は上がる仕組みになっている。

富豪の所得税はゼロ


近ごろ報道で明らかにされたように、アメリカの富裕層の多くは課税額を最小限に抑える節税対策や資金計画を積極的に取り入れており、たいていの人は連邦所得税を払っていない。

大富豪イーロン・マスクは4000ドル(約44万円)の児童税額控除が適用されるほど所得減額に成功したと報じられた。筆者は数年前に報道番組「ナイトライン」に出演し、ドナルド・トランプの納税額がわずか750ドル(約8万円)なのはどういうことかを解説した。非営利の報道機関プロパブリカが公表した所得税を免れたアメリカ人富裕層のリストを見ると、トランプはむしろぼられたほうかもしれない。

とはいっても、トランプの駆使した節税術の多くは平均的アメリカ人には手の届かない方法だ。ほかの大富豪(ビル・ゲイツ、イーロン・マスク、ウォーレン・バフェット、ウォルトン家など)が利用する節税術のほうが、所得が高く、純資産も多い(あるいはそのいずれかに該当する)一般市民にも利用しやすいものがある。

「不穏な社会の現実がショックを引き起こした面もあるのだろうが、プロパブリカはひと言も、こうした人々が税負担を抑えるために詐欺を働いたとか、嘘をついたとか、犯罪に手を染めたとは言っていない。端的に言えば、大富豪の納税額を劇的に減らした手法や手続きはどれひとつとして違法ではなかったのだ」──アビゲイル・ディズニー、アトランティック誌からの引用。

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ニューヨーク州ニューヨーク市。2018年11月1日にニューヨーク市のキャピテールで開催された2018ウィメンズ・メディア・アワード授賞式の壇上で挨拶をする受賞者アビゲイル・ディズニー。(撮影Mike Coppola/Getty Images for Women’s Media Center)先日、富豪の所得税支払い回避問題について発言した。
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翻訳・編集=小林さゆり/S.K.Y.パブリッシング/石井節子

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