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国際基準のエグゼクティブ・プレゼンス最前線


復活して無事に演技ができたことは、棄権を宣言してからの厳しい1週間のみならず、それ以前からの様々な苦難を乗り越え、手にした新たな自信となったことだろう。記者会見での「これまでの苦労が報われ、自分を誇りに思うことができました」という言葉がそれを物語っている。

会見では、マスクを着用したままだったため表情を読むことはできなかったが、手は机の下にあり、腕組みすることもなく、その声は棄権を発表した時よりもずっと落ち着いて聞こえた。

バイルズ選手はさらに、「私たちは自分自身にも目を向けなければなりません。私たちは、ただ外に出て世界が私たちに望んでいることをするのではなく、自分の心と体を守らなければならないのです」とも語った。

アスリートも人間だ。彼女のようなスーパーアスリートだって、現実的な問題を抱えた人間であることを気づかせ、思い出させてくれた。

今回の勇気ある行動と決断が、アスリート社会をさらに良い方向に変えるためのマイルストーンのひとつになったことは確かだろう。


Ali Atmaca/Anadolu Agency via Getty Images

世の中に大きなメッセージを与える存在に


4年に一度の大舞台であるオリンピック。今回は延長となり、選手たちはいつも以上に限界を越えようと自らを高めてきたはずだ。

そんな貴重な場ではあるが、長い人生で見れば、「たかがオリンピック」とも言える。今回の東京五輪だけが人生ではない。ここから先の良き選手人生、そして、豊かで幸せないち個人の人生のためには「大きな投資」も必要かもしれない。もちろん、無理さえもが価値になることもあるかもしれないが。

これはオリンピックやスポーツに限ったことではない。一般社会においても同様だ。自分の力の限りを出し尽くすことはもちろん大事だが、それで自分が壊れてしまい、取り返しがつかなくなるのであれば、異変に気づいた時点で退くことも勇気なのだ。そこから先に続いていく、自分のより良き人生を歩むために。

「人は、健全な心と体あってこそ最大の力を発揮できる」と言ったバイルズ選手は、もはやアメリカの人気アスリートの枠に留まらない。世の中の一人ひとりに、自分をケアすることの大事さを知らせ、そのプレゼンスで世界に大きなメッセージを伝える存在になった。

これをきっかけにさらなる意識改革が行われ、アスリートの未来が少しずつ良い方向に進化していくことを願っている。

文=日野江都子 編集=田中友梨

メンタルヘルス
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