志はどこへ? テドロス氏は「票」に釣られて来日したのか

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長(Photo by Jaber Abdulkhaleg/Anadolu Agency via Getty Images)


でも、テドロス氏の頭の中では「私が五輪開幕式に出席したら、日本が感謝して私に一票を入れてくれるかもしれない」という計算が働いたのかもしれない。テドロス氏は実際、五輪開幕式にやってきた。

ここで問題なのは、日本側から「事務局長選の話」をにおわされてしまった背景だ。日本側には「テドロス氏は典型的な日和見主義者」(関係者)という評価があった。本来なら、こんな話をされたら「俺を侮辱するのか」と怒るべきだし、警護や選挙の話を持ち出されるまでもなく、「WHOのトップとして、新型コロナを抑止する姿勢を日本の人々に訴えたい」と言って、日本にやってくるべきだったろう。テドロス氏は訪日を終えた後の記者会見で「日本とIOCは(コロナを)最小限に抑えるためベストを尽くしている」と語ったが、私の耳には空々しく響いた。

世界にはいろいろな仕事がある。人々はそれぞれ、「生活のため」「家族のため」「出世のため」など様々な理由で働いている。いろいろな事情から、不本意な仕事をせざるを得ない人もたくさんいる。でも、志だけはいつも高く持っていたい。

「Boys, be ambitious(青年よ、大志を抱け)」で有名なクラーク博士は、続けてこう語ったそうだ。「金銭や自己の利益に対してでもなく、人々が名声と呼ぶはかないものに対する大志でもない。人として備えるべき、あらゆることをなし遂げるための大志を抱け」。

テドロス氏だけではなく、日本の永田町にも、いろいろな会社にも、この言葉を聞かせたい人がたくさんいる気がする。

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文=牧野愛博

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