そんななか、開幕式に出席した世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長について、あまり芳しくない話を聞いた。テドロス氏は訪日する前、周囲に「本当に日本に行くべきだろうか」と尋ねて回っていたという。関係者が、テドロス氏に「あなたは日本で評判がよくない。訪日したら、身の危険も感じるかもしれない」と無責任な言葉をぶつけていたようだ。
確かに、テドロス氏は新型コロナウイルス問題で中国に甘い対応を繰り返してきた。中国が大規模な支援を続けてきたエチオピアで閣僚を務めてきたからだろう、という評価も定着している。
日本の関係者たちは、日本訪問を巡るテドロス氏の腰の引けた対応に辟易した。でも、菅義偉首相らが「東京五輪をコロナに打ち勝った証に」と唱えている以上、コロナ対策に取り組んでいるWHOトップの出席は欠かせない。テドロス氏に対する警護レベルを、最重要訪問客並みの厳戒態勢に引き上げた。
同時に関係者はテドロス氏にこう伝えた。「この五輪はコロナの感染抑止という重大なテーマを抱えている。WHOの最高責任者が出席する意義は大きい。もし、訪問してくれたら日本は好意的に対応する。来年の事務局長選での対応も良くなるだろう」と伝えた。
WHO事務局長は任期5年で2期まで務めることができる。次期事務局長選を巡っては、今年10月に候補者が出そろい、来年4月に行われる予定のWHO年次総会で選ばれる見通しだ。
2017年に事務局長に初当選したテドロス氏は、再選を目指す意向だとされる。ただ、中国寄りだという評価が出ているため、米国や欧州諸国などが支持するかどうかはわからない。日本ももちろん、テドロス氏支持を決めているわけではない。