全方位の事柄をこなす、映画監督が想う未来──北野唯我「未来の職業道」ファイル


言い換えれば、よい事業や組織は、経営者やリーダーの進化と同時につくられていくものだ。経営者やリーダーの変化の度合いが大きければ大きいほど、すさまじい事業が生まれるのではないか。偉大な経営者は、巨大な事業と組織をつくるプロセスのなかで生まれてくるものであり、最初から偉大な経営者などいない。大友監督との対談は、このことを私に痛烈に感じさせた。

さて、ついに『るろうに剣心』シリーズの最終章が全国で公開になった。いまの大友監督のキャリアは、例えるなら「グローバルで展開する企業のCEO」なのかもしれない。かつてスタートアップと呼ばれた企業が国内やアジアで成長し、マザーズに上場し、さらに東証一部に上場するとともに、アメリカやEUで戦えるようになっていく。その姿とまったく同じスケール感を感じる作品だった。一つひとつのクリエイティブ、音楽、脚本と演出の力により「ハリウッド級のクオリティ」のアクションと呼べる作品に仕上がっている。すべてのビジネスパーソン、経営者に「その進化」を鑑賞してほしい。




大友啓史◎1966年、岩手県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、90年にNHK入局。97年から2年間、ハリウッドなどアメリカで映像にかかわる技術を学ぶ。2007年、土曜ドラマ『ハゲタカ』が世界的な国際番組コンクールであるイタリア賞を受賞。09年の映画版『ハゲタカ』で映画監督デビュー。10年の大河ドラマ『龍馬伝』ではNHK史上最年少でチーフ演出を務めた。11年にNHKを退職し、大友啓史事務所設立。主な作品に『るろうに剣心』シリーズ、『秘密 THE TOP SECRET』『3月のライオン』『影裏』などがある。

北野唯我◎1987年、兵庫県生まれ。作家、ワンキャリア取締役。神戸大学経営学部卒業。博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。子会社の代表取締役、社外IT企業の戦略顧問などを兼務し、20年1月から現職。著書『転職の思考法』『天才を殺す凡人』ほか。近著は『内定者への手紙』。

文=神吉弘邦、北野唯我 写真=桑嶋 維(怪物制作所)

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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