小売業界で用いられる「クライアンテリング」という用語は、販売ソフトウェアや、個々の顧客に関するデータ、および、顧客との関係を構築する活動といったものを活用する手法を指す。EYコンサルティングのマーシー・メリマン(Marcie Merriman)は2020年にWWDに対して、「クライアンテリングとは要するに、顧客が望む形式がなんであれ、顧客に接触しようとすることだ」と説明している。「たとえば、顧客は実店舗を訪れ、その環境に身を置きたいと望むかもしれない。あるいは、パーソナルスタイリストに、自分のいるホテルの一室まで来てほしいと望むかもしれない。クライアンテリングの核心は、一人ひとりの顧客のいる場所に、企業が直接手を伸ばすことにある。そして多くの人にとって、それは自宅での買い物を意味する」
もともとこうした戦術をとってきた小売事業者が直面する課題のひとつが、販売員の準備とトレーニングだ。販売員は、客にどんな質問をするべきだろうか? どうやって商品を薦めればいいのか? 他の客が何に魅力を感じているかについての情報やデータを持っているだろうか?
小売事業者が、有能な販売員を育てるにはどうすればいいのだろうか? 販売員が、適切な質問を確実にできるようにすればいい。そのためには、顧客の声を集める新たなプラットフォームを開発し、販売員に対してデータと知見をフィードバックして、客に伝えるべきことや売り込み方法がわかるようにする必要がある。
バーチャル販売は、しばらく前から中国で大流行している。米国の小売事業者は、最前線のスタッフが顧客を理解し、その心をつかめる体制を整えなければ、世界に追いつくのに苦労することになるだろう。