ワクワク、ドキドキ。福井県知事が語る「日本で最もしあわせな県」の戦略

左は杉本達治福井県知事、右は筆者(知事応接室にて)


杉本:福井県の長期ビジョンは、「『安心のふくい』を未来につなぎ、もっと挑戦!もっとおもしろく!」を基本理念にしています。長い歴史の中で先人たちが培ってきた「安心と信頼」の福井をみんなで守り、次世代に引き継いでいく。その安定した社会基盤をもとに、誰もが希望を持ち、様々なことに挑戦し、その挑戦を互いに応援しあう。そういう、ワクワク、ドキドキするようなおもしろい福井県を目指しています。

地域活性化活動やワーケーションによる、人的交流から生まれる新価値創造は将来の福井にとりとても重要だと思っております。例えばワーケーションには、仕事と趣味の活動を組み合わせた新たな旅のスタイルとなる「趣味満喫型ワーケーション」と、地域との交流や課題解決活動などを組み合わせた「地域交流型ワーケーション」があると考えています。

特に「地域交流型ワーケーション」は、新しい働き方を取り入れ、地域交流を社員研修や社会貢献(SDGs)と位置付ける都市部の企業にとって導入がしやすいものと思われます。本県では、市町と協力し、「交流活動」「ワークスペース」「滞在施設」をセットにしたプランを企画し、都市部の企業に売り込んでいるところです。

「地域交流型ワーケーション」に力を入れている鯖江市の事例をお話したいと思います。

鯖江市は、官民が一丸となったまちづくりや新規事業開発が大変活発なエリアです。歴史的にメガネフレームや漆器、繊維など分業制を中心としたモノづくりが大変活発で、最近ではメガネフレームのチタン加工技術を生かし、医療分野やIT分野など新たな分野にも積極的に進出しています。また、漆器では、従来の和の器だけではなく、自転車やインテリア雑貨、高級家具など新しい分野に進出しています。いずれもコアコンピタンスを生かした新分野へ進出しているところがポイントです。

また、複数の自治体が連携した官民一体で地域活性化イベントの事例として、鯖江市、越前市、越前町で開催される「見て・知って・体験する」作り手達とつながる体感型マーケット「RENEW(リニュー)」があります。持続可能な地域づくりを目指した官民一緒に盛り上げている工房見学イベントで、2015年から毎年10月に開催していて今年で7回目の開催となります。

越前漆器・越前和紙・越前打ち刃物・越前箪笥(たんす)・越前焼・眼鏡・繊維の7産地の工房・企業を一斉開放、見学やワークショップを通じて、作り手の想いや背景を知り、技術を体験しながら商品の購入も楽しめます。

現在鯖江市では、ものづくりの新たな可能性を学ぶワーケーションとして、「マナベ、アソベ、サバエ」をキャッチフレーズに、「世界の鯖江から学ぶ新価値創造型ワーケーション」というワーケーションプランを進めています。製造業でモノづくりや新規事業のご担当、理工系大学院生などの参加を想定しています。企業や自治体の方々、さらには将来のモノづくりを担う理工系大学院生の方々と地元の方々が交流することにより、新しい価値が地元に生まれる事を期待しています。

福井県はとてもコンパクトな県です。距離の近いところに海や山、都市的な地域があり、伝統的工芸品の産地やZENの精神性もあります。また、人と人の距離もとても近いと感じています。例えば、1500年の歴史がある越前漆器や越前和紙など、何かひとつを1週間から2週間かけて作っていくというワーケーションは、福井県との親和性が非常に高いものとなると考えています。

また、周りと協調しながら、分業もし、よいものを作り、しっかりと稼いでいこうという発想があり、とても居心地のよい県だと思います。一定期間、福井県に来て、見て、触れて、自分でやっていただく。そうすることで福井のよさ、すごさ、「ワクワク、ドキドキ」を感じていただけると思います。

これから福井県では、内外の多くの方と地元の方の交流を通じた新しい価値の創造に力を入れていきます。活動を通じて交流人口が増え、福井の魅力を感じてもらう。このような活動が全県に広がるように、県として様々なバックアップをしていきます。
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文=鈴木幹一

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