インタビューを終えて
阿部守一長野県知事に初めてお会いしたのが、2014年に東京で開催された「長野県の長寿力」(阿部守一長野県知事著)の出版記念パーティーの席で、別荘の友人からご紹介頂いたのが最初でした。その時、長野県の長寿の秘訣・魅力を熱く語っていらした事を鮮明に記憶しています。以来様々な場面でお会いして意見交換してきました。
今回のインタビューで一番印象に残っている言葉は、「人と人が交わることによる新価値創造」「長野県は甲州街道や中山道など江戸時代から人々の交流が活発な歴史的風土が有る」と、人々の交流を強調されていたことです。
イノベーションの父といわれた経済学者のシュンペーターは、物や力を新しいやり方で結合することを新結合と表現、それがイノベーションに繋がると自著「経済発展の理論」で述べています。また、ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・M・クリステンセンは、一見無関係に見える異なる分野同士を関連付ける事(知の結合)が重要とも述べてます。オープンイノベーションの重要性を述べていらっしゃる阿部知事の言葉とも符合します。
例えば軽井沢は、軽井沢宿、沓掛(中軽井沢)宿、追分宿と3つの宿場が中山道にあり、江戸時代から活発に人々の交流が行われていました。明治時代になり、当時の政財界の方が万平ホテルや三笠ホテルに集まり懇談する事が多く、それがサロン文化と呼ばれ、大正・昭和と別荘で多様な方々が懇談するという、別荘文化に進化してきた歴史的風土があります。まさにオープンイノベーションです。それが、現在の軽井沢におけるリゾートテレワークの基礎であると言われています。
今、長野県では、「信州ITバレー構想」を強力に進めています。これは、Society5.0時代のデジタル社会を担うIT人材・IT企業の集積と、産官学の連携によるIoT、5G、ビッグデータ、AIに代表されるIT技術やITビジネスの創出を促すエコシステムの構築によるすべての産業のDX推進や革新的なITビジネスの創出が目的です。
コロナ終息後、長野県はますます首都圏の方々と交流する機会が増え、新しい価値が創造されていくでしょう。オープンイノベーションで多様な知恵が交わり、新しい価値が生み出されていく。今、確実にその方向に進んでいると感じます。これからの長野県の進化に期待が膨らみます。
阿部守一◎長野県知事。1960年東京都生まれ。東京大学法学部卒業後、自治省(現・総務省)に入省。本省勤務のほか、山口県、岩手県、神奈川県、愛媛県などへの出向も経験し、地方自治の現場で活躍する。2001年、長野県企画局長に就任。同年10月からは副知事を務める。2007年、横浜市副市長に就任。2009年、内閣府行政刷新会議の事務局次長に就任し、事業仕分けに関わる。2010年8月、長野県知事選挙に出馬し初当選。現在、三期目を務める。
連載:『人生100年時代 豊かな生活をおくる次世代ライフスタイル学』
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