ビジネス

2021.08.04 17:00

ソフトバンク出資のバイオテク企業「Zymergen」が株価急落の理由

退任を発表したCEOのジョシュ・ホフマン(写真中央)(C)zymergen

退任を発表したCEOのジョシュ・ホフマン(写真中央)(C)zymergen

米国の新興バイオ企業の「ザイマージェン(Zymergen)」は今年4月に上場したばかりだが、8月3日午後に共同創業者兼CEOが退任すると発表した。カリフォルニア州エメリービルに本社を置く同社は、2021年の製品の売上が見込めないと述べ、2022年に関しても、意味のある数値が見込めないと述べている。

ザイマージェンの株価は時間外取引で69%の急落となり、25億ドル(約2700億円)近くの時価総額が吹き飛んだ。2013年に同社を共同創業したジョシュ・ホフマンはCEOを退任し、取締役会長のジェイ・フラットリーが暫定CEOを務めることになる。

ザイマージェンは上場前に、ソフトバンクやTrue Ventures、DCVCなどの投資家から10億ドル以上の資金を集めていた。同社は4月に企業価値30億ドルでIPOを行い、5億ドルを調達していた。

同社が2月に米国証券取引委員会(SEC)に提出した書類によると、規制当局はザイマージェンの売上高や拡大計画、財務状況などについて当初から疑問を抱いていた模様だ。目論見書によると、同社は2020年に2億6200万ドルの純損失を計上し、収益はわずか1300万ドルだった。

同社が市場に出している製品は「ヒアリン(Hyaline)」というフィルム素材一つのみで、この素材はバイオベースのポリマーフィルムであるとされている。ヒアリンは、透明でありながら耐久性があり、折りたたみ可能なスマートフォンなどのタッチスクリーンの素材に用いられるという。

ザイマージェンは3月にSECに提出した書類で、ビジネス上の課題を詳細に説明していた。同社は、ヒアリンなどの電子フィルムの主要な製造拠点を日本に置いており、米国でも製造委託先を確保したと述べていた。しかし、米国での委託先からは、2021年末までの供給しか確約できないと言われたという。

その結果、代替の製造元を見つけられない場合、来年以降の製品の納入に支障が生じることになるとザイマージェンは述べていた。同社はさらに8月に、一部の顧客がヒアリンを製造工程に導入する過程で問題が生じたと発表したが、そのために製品の展開を遅延させていた。

ザイマージェンはまた、同社の製品の市場が、当初の予測ほど実りのあるものではないことが判明したと述べていた。「データを分析した結果、折りたたみ式ディスプレイの市場は、短期的には当初予測したほどの売上が見込めず、成長スピードも予測を下回ることが分かった」と同社は報告していた。

編集=上田裕資

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