米製薬大手ファイザーとバイオ医薬品企業モデルナはいずれも、欧州連合(EU)と新たに結んだ供給契約で、それぞれが生産する「mRNAワクチン」の価格を引き上げた。
ロイターによると、ファイザーとドイツのビオンテックが共同開発したワクチンは25%値上げし、1回分あたり23.15ドル(約2500円)となった。それほど大幅な変更ではないものの、出荷量を考えれば、かなりの増収になるはずだ。
また、モデルナのワクチンは、13%の値上げで同25.50ドル(約2800円)となった。同社は初め、EUには同28.50ドルで供給する約束をしていたという。それに比べればまだ安い値段での契約だが、受注量は当初の予想を大幅に上回っているはずだ。
モデルナ製ワクチンの需要が大きく増えたのは、一部のEU加盟国で、英アストラゼネカ製と米ジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンに対する懐疑的な見方が強まったことが主な理由だ。ごくまれに起きることではあるものの、両社のワクチンは血栓の発生との関連性が報告されている。
確かに、新型コロナウイルスのワクチンには需要がある。ブースターショット(追加接種)も必要になるだろう。値上がりしても、需要はなくならない。EUは当初見込んでいたアストラゼネカからの供給が需要に追い付かないこともあり、不足分を「mRNAワクチン」で補う必要がある。
また、確かにファイザーやモデルナなどは利益を出すため、株主価値を高めるため、またはその他の目的のために運営されている企業だ。だが、「できる」ことがすべて、「すべき」こととはいえない。パンデミックが続く中でのワクチンの値上げは、火災が続いている中で、水道料金を引き上げるようなものではないのだろうか。
米国を上回る接種率
EU各国におけるワクチン接種プログラムは、初めは多くの問題に直面し、接種率が大きく上り始めるまでには、時間がかかった。