ビジネス

2021.08.05

あだ名は「開店狂魔」 コロナ禍でも世界展開のメイソウの秘密


「将来的には、おそらく当社店舗の半数以上が国外店舗となるでしょう」

各国の店舗のうち、直営店は120店にすぎない。それ以外は「資産軽量化モデル」と葉が呼ぶ方式を採用しており、7年前の創業以降、短期間で店舗を増やすことができたのはこのモデルのおかげだ。

店舗の賃貸契約はフランチャイズ加盟店が責任を負い、その代わりメイソウは、スタッフの教育、販売戦略の統括、商品の提供を手がける。フランチャイズ加盟店の取り分は売り上げの33〜38%だ。

ほかのチェーン・ビジネスでは、フランチャイズ加盟店は単に商品を仕入れ、ブランド名を使って販売活動を行うが、メイソウの場合、加盟店が困難を乗り越えられるよう、深くかかわっている。

メイソウにとって直近で最大の課題はやはり、パンデミックの予期しない影響だ。売り上げに響き続けることもありえるからだ。だが葉は、世界的に回復の兆しは見えていると考え、1月のポルトガル出店を含め事業拡大計画を進めている。

我ながらアグレッシブだと思うと、葉は言う。中国で急成長を遂げた葉には、開店マニアを意味する「開店狂魔」のニックネームがついた。

「でもアグレッシブでいられるのは、事業への自信があるからなんです」

新しいトレンドにいち早く着目する


中国内陸の湖北省で小作農の末息子として生まれた葉は、外の世界に興味を抱きながら成長した。「父が市場で買ってきたカレンダーで北京やロサンゼルス、ニューヨークなどの写真を見て、大きくなったら、この目で世界を見てやろうと思ったのです」

中南財経政法大学で経営学を学んだ彼は、21歳で職を求めて広東省に移り住んだ。3カ月間の求職活動の後、現地の鉄工所に営業として採用された。

その後、友人と一緒に陶器の販売を手がけた。次に、化粧品とアクセサリーの販売に乗り出し、これがきっかけで10元(約170円)未満の商品のみを扱う「アイヤヤ」というディスカウント・ストアを立ち上げた。急速に事業を拡大したが、やがて「消費の格上げ」というトレンドが始まった。より質の高い商品が好まれるようになり、安い使い捨て商品の市場が縮小を始めたのだ。

葉がメイソウのヒントを得たのは13年に来日したときのことだ。買い物客でにぎわう無印良品やユニクロの店内を観察し、魅力的なデザインと手ごろな価格が人気の秘密だと考えた。

「そこで思ったんです。このやり方を中国に持って帰ったらどうだろう、と」

日本テイストを加味しようと、葉は日本人プロダクト・デザイナー、三宅順也を招き入れた。13年末には広州でメイソウ第1号店をオープン。アイヤヤの店舗は徐々に閉め、新ブランドに専念した。

メイソウは当初からグローバルなビジネスに育てることを目標としていた。

「広州の生活水準はシンガポールやマレーシアとさほど変わりません。広州で成功するなら、国外でもチャンスがあるはずなんです」

メイソウはフランチャイズ契約を増やして店舗数を増やしていった。14年には日本、シンガポール、マレーシアにも店を構え、世界中に展開した。
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文=ユエ・ワン 編集=森 裕子

この記事は 「Forbes JAPAN No.082 2021年6月号(2021/4/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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