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「修理する権利」は新しい社会モデルのヒント

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Nor Gal / Shutterstock.com


立法化される「修理する権利」


日本では少なくともこれまで、物を大切に長期間使うことが美徳とされていたが、ソフト化やサービス化が進む現在は、修理して使い続けることはよりコストのかかる経済的合理性のない非効率な選択になりつつある。

ところが最近、アメリカでは「修理する権利」が立法化されようとしており、バイデン大統領もその動きを支持しているという。つまり現在はメーカーが独占的に修理する権利を行使している家電や自動車などの製品に対し、消費者が自ら、もしくはメーカー以外の専門店を介して修理する権利を確保しようとするものだ。


スティーブ・ウォズニアック(Photo by Lachlan Cunningham/Getty Images for Discovery)

アップルをジョブズと一緒に興したスティーブ・ウォズニアックは、「創業当時はテレビやラジオなどの家電を買うと回路図などの技術情報が付いていて、自分で修理したり改造したりできるオープンソースの文化があり、アップルもそうした恩恵を受けて伸びた」と告白し、「修復する権利をもっと全面的に認めるべき時が来ている」と述べている。

というのも、パソコンの黎明期には、ホームブルー・コンピューター・クラブ(アマチュア手作りクラブ)のような集会でホビイスト(つまり初期のハッカー)が新しいアイデアを見せあって、自由に技を磨き合ってレベル向上を計る文化があったからだ。

ところがパソコンがビジネスになってくるとソフトが商品化され、その急先鋒に立っていたマイクロソフトのビル・ゲイツが、ホビイストが開発者の努力を無視してソフトを勝手にタダでコピーしていると非難する手紙をクラブ会報誌に送りつけるような騒ぎが起きていた。初期のハッカーたちは、こうした産業化を自由なアイデアを阻害する邪悪なものと考え、リチャード・ストールマンなどがフリーソフトウェア運動を起こしてソフト会社と激しく対立していた。

ハッカーと呼ばれる人は小さい頃から好奇心が旺盛で、時計やラジオを分解して遊んだ経験を持った人も多く、電話に特殊な音を送ってタダがけをするフォーンフリークから始まり、新しいアイデアのつまった未知のパソコンやソフトを分解しては改良していくことに無上の喜びを感じており、知的好奇心を邪魔する商業主義には断固反対する傾向がある。

しかしメーカー側は高い研究費を注ぎこんで開発した知的財産の塊のような製品の中身を開示したり、他人が勝手に手を加えたりすることを嫌がる。コピー商品が出回る危険性もあり、自社の自動車が事故を起こしたりパソコンが火を噴いたりした場合はどうやって責任を取るのか? という製造物責任の問題も出て来る。

現在のEV車はモーターの付いたパソコンのようなもので、ハッカーの中には自動運転車をネットからハックして外から操れると自慢する強者もいる。すべての製品がIoTなどでネットにつながるようになれば、こうした製品の安全性を確保することは非常に難しくなってくるだろう。

そうした時代には、製品を作る側と利用する側の距離が近づき、両者の区分が次第に曖昧になってくる。利用者の中には、メーカーの言うなりに純正品の使用を強制され、自分の工夫で安価に修理して長く使う自由を奪われていると、長年の不満を訴える人も出て来る。

コピー機やプリンターのように本体を安価に提供してシェアを確保し、その後は純正品のトナーやインクなどの補充品しか使えないようにして儲けるビジネスモデルもあり、利用者が昔の番号ポータビリティ―のない頃の電話のように、メーカーの製品に囲い込まれて選択の余地がない状況に追い込まれるのは健全な状態とは言えないだろう。
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文=服部 桂

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