マクドナルドから、全世界のオーナーや従業員、サプライヤーに送られたメールによると、この新たなチームは、既存の4部門を統合したものだ。具体的には、グローバルマーケティング、グローバル店舗開発およびソリューション、データ分析、デジタル顧客エンゲージメントの4部門が統合された。これらの部門は、同社が2020年11月に発表した経営戦略「アーチを加速する(Accelerating the Arches)」で掲げた成長の柱を担ってきた。
メリタス・グループ(Meritas Group)のリポートは、2019年の時点ですでに、顧客が価格や製品そのものよりも「体験」を重視するようになってきており、最高体験責任者(Chief Experience Officer:CXO)を置く企業が増えていると指摘していた。さらにPwCのリポートでも、購買決定のカギを握る要素として「体験」を挙げた消費者が全体の73%を占めたとされている。
つまり、マクドナルドの今回の動きは、時代の流れに乗ったものとも言える。とはいえ、この1年半のあいだで、消費者体験は劇的に変化した。コロナ禍により飲食店が営業停止を余儀なくされ、日常生活のデジタル化が加速されたからだ。
例えば、QSR(Quick Service Restaurantの略。ファストフード・レストランを指す業界用語)におけるデジタル経由の売上は、2025年までに全売上の半分以上を占めるようになると見られている。これは、コロナ前の予測を70%も上回る数字だ。マクドナルドも、2021年内にデジタル経由の売上が占める割合が20%に達すると見込んでいる。
このような急激なデジタルへの移行により、「完璧な顧客体験」の提供は、これまで以上の難問と化している。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院が発表した調査結果によると、各企業は今、オンラインの顧客体験について「対面での体験と同様の、入念なサービス設計」を用意する必要に迫られているという。「新型コロナウイルス感染症が、顧客体験を不可逆的に変容させている」ためだ。
マクドナルドにとっては、顧客のいる場所で「接点」を設けることが必要だ。顧客は、ドライブスルーや、自宅からの注文、スマートフォン経由の注文を好む傾向が増している。すでにかなり普及が進むこの3つの接点をさらに効率的にすることは、非常に理にかなった判断だ。
一例を挙げると、同社は約5億ドルをかけて全米の約1200店舗を「現代化」する計画を打ち出しているが、これには、デジタル、デリバリー、ドライブスルーという「3つのD」業務への集中投資が含まれている。