EV大国の中国で顕在化、次の環境問題は「廃棄EVバッテリー」

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中国はすでに、広東省で発生した、バッテリー廃棄物に関連するマンガン汚染への対応を余儀なくされている。また、リチウム電池が劣化して膨張や液漏れなどが生じる状態になると、フッ化水素などの有毒物質が生じうる。

北京理工大学のウー・フェン(Wu Feng)教授は、電池の毒性のレベルをこう説明している。「20gの携帯電話用電池ひとつで、標準的なスイミングプール3つ分の水を汚染し得る。陸地に廃棄されれば、1平方キロメートルの面積を50年にわたって汚染する」

中国の問題については、規制の杜撰さから生じている部分もある(中国では特によくあることというわけではないが)。どの分野であろうが失敗を認めることを嫌ってきた中国共産党でさえ、しばらく前から、バッテリーのおよそ半数が不適切に廃棄されてきたことを認めている。そうした認識に加え、今後生じうる問題が広く理解されてきたことを受けて、共産党は監視の厳格化に着手している。だが、そうした規制の問題で広東省の事例を説明できるとしても、EVの増加とバッテリーの寿命に伴って今後生じうる汚染問題に関しては、それだけで対応しきれるとは言いがたいだろう。

筆者は、米国などの他国がEVを諦めるようになると主張しているわけではない。EVは温室効果ガス排出削減に貢献するだろうし、いずれにしても従来の自動車よりもはるかに低温で静かに走行し、その点もEVを推奨する理由になる。未来の技術により、いずれEVバッテリーから毒性物質が取り除かれ、より良い廃棄方法が見つかることも疑いようがない。

だが、そうした現在と未来のあらゆる利点を加味してもなお、EVが潜在的な汚染問題を抱えていることは、一般市民と政府に対して、EVは世間で言われているような純然たる善とは言えないことを喚起するはずだ。また、温室効果ガスが最近、人々の意識をどれだけ占めていようとも、それだけが環境問題だとはとうてい言えないことを喚起するはずだ。中国の現状は、未来の問題の可能性を告げる明確な警鐘なのだ。

翻訳=ガリレオ

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