同社はIPOの詳細を明かしておらず、コメント要請にも応じていないが、複数の報道で、約20億ドル(約2190億円)の資金調達を計画しているとされる。ビエルクリスタルの創業者の楊建文とその妻の林惠英夫の保有資産は、今年2月のフォーブスの香港の富豪リストで186億ドルと試算されていた。
香港メディアのサウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、同社は2018年の香港市場への上場で15億ドルの調達を見込んでいたが、米中間の貿易戦争に端を発したボラティリティの高まりにより、それを延期していた。
ビエル・クリスタルの、今年3月までの1年間の純利益は前年比70.8%増の約32億香港ドル(約4億600万ドル)で、売上は前年比8.9%増の約300億香港ドルだった。
同社によると、今年は旧正月明けのパートナー企業の操業再開が遅延したことで、収益にマイナスの影響が生じたという。また、パンデミックの影響で在宅勤務が増えて、スマートデバイスの需要が高まったものの、消費者心理の悪化や小売店の閉鎖によってその効果が一部相殺されたという。
同社の申請書類には、今後の米中間の対立が事業に影響を及ぼす可能性が指摘されている。「米国と中国の関係が今後どのように進展するかを予測することは困難であり、それが当社のビジネスに与える潜在的な影響も予測できない」とビエル・クリスタルは述べている。
ビエル・クリスタルは、現在68歳の楊建文が1989年に中国の深圳で設立した企業で、創業当初は機械式時計のガラスカバーを製造していた。同社は、2000年代初頭にまだ携帯電話にプラスチックが使われていた時代に、いち早くガラス製スクリーンの製造を開始したメーカーのひとつだとされている。
ビエル・クリスタルは現在、アップルやサムスン、シャオミ、レノボなどにスマホやタブレット、ウェアラブル機器向けの部品を納入している。フォーブスは2017年1月の記事で、世界で使われるiPhoneの3分の2がビエル・クリスタル社製のガラススクリーンを搭載していると報じていた。