著名人の告白だけでなく、うつ病やパニック障害など、メンタルの不調に対する理解は世界で少しずつ訴えられている。日本でも、数十年前から過労死や対人関係のストレスは問題視されてきた。
一にも二にも、予防が肝心
精神疾患スクリーニングツールを提供するジャパンイノベーションの調査によると、同社のスクリーニングアプリは、2020年5〜6月、7589人中5割をも超える人々を「うつ病可能性あり」と判定した。精神疾患スクリーニングツールでは、うつ病を主とした精神疾患や神経発達症(発達障がい)の特性などを、モバイル機器を使ってスクリーニングできる。メンタルチェックやコロナうつ対策として、企業、大学、社会福祉法人、クリニックなど様々な法人に提供している。また、精神科専門医受診の有無を判断するアイテムとして活⽤できるプログラム(アプリケーション)でもある。
今回、ジャパンイノベーションの代表であり精神科医である伊藤英樹氏に、コロナ禍におけるうつ病について聞いてみた。
ジャパンイノベーション代表、精神科医伊藤英樹氏
伊藤氏によると、精神的にもっとも疲れる可能性がある時期は「これから」だそうだ。
予測不可能な時代を生きる我々は、うつ病を他人事として捉えるのではなく、むしろ予防と治療法をしっかりと理解する必要があると伊藤氏は強調する。コロナウイルスの感染予防を皆が心がけているように、コロナ禍ではうつ病にもかからないよう、意識的に気をつける必要がある。
「うつ病にかかる」とは、どういうことか
伊藤氏は数十万もの精神疾患を有する人をみてきた。そこで、うつ病にかかった時、人はどういう状態になるか説明した。
「うつ病になると、起き上がるのもしんどく、ひたすら何もできない状態が続きます。復活後、うつ病状態にいた自分を振り返ってみると、自分じゃなかったみたいと言う人がほとんどです」
一般的に、うつ病の初期症状は4つに分けられる。「1.気分の落ち込み、2.焦り・不安、3.意欲の低下、4.さまざまな身体症状」である。
また、コロナショックのように「環境によって強制的に起こされる変化」は、人を精神的に疲弊させる。予期せぬ環境の変化による予定の変更や機会の喪失が、人のやる気や意欲を奪い、不安や焦りを抱える原因にもなるのだ。
コロナ禍では、うつ病にまつわる最低限の知識を身につけて、家族や友人、同僚など、身近な人を少しでも気にかける動きが必要だ。