デルタ株が招く「ブレイクスルー感染」?
ワクチンの効果は、当然100%ではない。オーストラリア・ニュージーランドのニュースサイト「theconversation.com」によると、ワクチン効果「95%」は、たとえば3カ月の調査期間に「ワクチン未接種の1万人のうち100人が感染」した場合、「同じ3カ月に、ワクチン接種した5人が感染する可能性がある」という意味だ。
だから当然、ワクチン接種後にも感染するリスクはある。問題は、変異株、デルタ株の影響で、予想されたよりもブレイクスルー感染が起きている数が多いということだ。
CDC(米疾病対策センター)の報告によれば、2021年1月1日から4月30日までの間に起きたブレイクスルー感染は1万262人。ちなみに同期間の感染者数は1180万人だ(CDCは5月1日以降、ブレイクスルー感染の調査をストップしている)。ブレイクスルー感染者数は、当初予測を上回る数らしい。
エンデミック、エピデミック、パンデミック
今年5月、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は「トンネルの先は見えている、(世界は)少しずつパンデミックからエンデミックのようになる」と話した。
「エンデミック」は聞き慣れない言葉だが、感染症のフェーズには、「パンデミック」、「エンデミック」、さらに2者の中間にあたる「エピデミック」の3種類がある。
ロンドン衛生熱帯医学大学院のロザリンド・エゴ准教授らによると、エンデミックは、ある地域で感染症が1年中流行している状態という。「水ぼうそう」がそのよい例で、狭い範囲で比較的に緩やかに広がり、予測の範囲内で収束する。
エピデミックは、比較的狭い範囲で点、点と流行し、感染スピードも遅い状態。まず感染が広がり、ピークを迎え、そこから減少していくこと。インフルエンザのように、秋から冬にかけてピークを迎え、そこから収束していく状態だ。
そしてパンデミックは、世界中でエピデミックがほぼ同じ時期に起き、国境を越えて世界中で大流行している状態。新型コロナウイルスが現在、世界に及ぼしている影響がまさにこれだ。
先の尾身会長の「パンデミックからエンデミックのようになる」発言は、デルタ株の素顔が明らかになる以前の発言だったことは銘記するべきだろう。
マスクはいつはずせる?
ワクチン接種者の割合が上がっていくにつれ、当然、「マスクはいつはずせるのか」が大きな関心事になってくる。英国イングランドでは7月19日以降、マスク着用や対人距離の確保が法的義務ではなくなったし、米国でもCDCは、すでに「マスクを屋内で着用せよ」とは言っていない。
だが、たとえば米紙ニューヨーク・タイムズのポッドキャスト「The Daily」7月26日配信分で、「科学およびブレイクスルー感染のリスク」記事を担当したアプーバ・モンダビリ記者は、「エンデミックにそろそろ移行するという考え方は延期しなければならなそうだ」としたうえで、「ここ数日で何人もの公衆衛生の専門家と話したが、彼らはみな、ワクチン2回接種済みの人でも、家にいる時以外はマスクをするべきと考えているようだった」と話した。
デルタ株の驚異とともに長びく「パンデミック期」を生き抜きながら「エンデミック期」への移行を享受したい──。そう願うなら、マスクはまだまだ手放せないようだ。
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