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2021.08.05

アフターコロナの「富裕層観光」が変化、キーワードは?

Lane Oatey / Blue Jean Images / Getty Images


一般の個人客はさまざまな理由でまだすぐには戻ってこられない状態でしょう。オーバーツーリズムの対策としてウエルネスツーリズムという考え方があります。一般的な人気観光地ではないところでも、ウエルネスや特別な体験ができるところには富裕層は喜んで出向きます。ブータンのシックス・センシスはトレッキングを楽しむ富裕層でいつも予約がいっぱいです。

日本でも一時期インバウンドツーリズムの行き過ぎで、観光地がかなり悲鳴を上げている時期がありました。今回コロナ禍でリセットされたのですが、以前のようなオーバーツーリズムを望む観光地は少なくなっているのではないかと思います。逆に客単価をあげて、富裕層トラベラーに来てもらいたいのではないでしょうか?ただ、富裕層はそれこそ旅行先の選択肢もたくさんありますから、いくら来てほしいと望んでもそう簡単にきてもらえるものでもありません。

先ほども少し触れましたが、日本には世界に誇るウエルネスの貴重な体験ができる地域がいくつもあります。実際住んでいる方々が気付いていないこともあるのですが、海外の富裕層の方たちと話す機会があると、こちらのほうが逆に気が付かされてしまうことも多くあります。私はいま、注目している地域がいくつかあるのですが、例えば、熊野古道から高野山に続く道、禅の総本山・福井県の永平寺、そして瀬戸内海です。


2018年、新しく生まれ変わった永平寺門前の参道入り口

また、温暖化で雪が希少価値を持つ昨今、日本にある雪国も重要な存在です。北海道ニセコや長野県の白馬、新潟県の妙高といったエリアはすでに海外の富裕層に人気ですが、ニセコでは雪を見に来るだけの人が30%、初心者として麓のゲレンデで楽しむ人は30%、残りがスキーやスノボを本格的に楽しんでいるという実態があります。

日本のかつてのスキー旅行みたいに、時間を惜しんでずっとスキーやスノボをやり続ける、という形態ではなく、スノーリゾートでいろいろな形の体験を楽しみたいインバウンド旅行客の存在に気が付きます。スキーリゾートはアジアでは日本が最大で自然環境が最も備わっていると考えています。日本が世界に誇れる旅行スポットだと思っています。

──日本ではワーケーションが注目されています。特にコロナ以降その傾向が高いです。ワークの定義は仕事だけではなく、趣味・研究・勉強という意味もあ有るので、仕事だけではなく自己研鑽、ウエルビーングなど自分にとって重要な事をするようなワーケーションも有り得ます。費用も会社の経費ではなく、自分で負担して参加する形態もあ有るでしょう。コロナ終息後、ライフスタイル、ワークスタイル、価値観、習慣など様々な分野で変化が起きると思います。特に、ライフスタイルの中にワークも有り、完全ボーダーレスの新しいライフスタイルも定着していくと思われます。相馬さんは今後どのようなワーケーションに注目されていますか?


一般社団法人日本ワーケーション協会発表の、ワーケーションの7分類

戦後の日本にはそもそもバケーション文化がなかったような気がします。団体旅行によって日本の名門旅館や努力をしているホテルは、コストの切り下げにキュウキュウとし、気が付いたら個人旅行客の満足度に対応ができないようなオペレーションになってしまったのではないでしょうか?
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文=鈴木幹一

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