コロナ禍においても、様々なデジタルグッズやサービスを取り扱うソフトウェア開発者の活動が脚光を浴びることがある。ひとつの大きなデジタル経済のプラットフォームであると言われるアップルの「App Store経済圏」の実情を取材した。
デジタル経済の活気がデベロッパの意欲を喚起
最初にデジタル経済の姿を捉えようとする際に持つべき視点について、香港科技大ビジネススクールで教鞭を執る川口康平助教授に見解を聞いた。川口助教授は2015年6月にロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで経済学の博士号を取得。実証産業組織論、およびビジネスエコノミクスを専門とされているスペシャリストだ。
オンラインで実施した取材に対して、川口氏は「デジタル経済の価値を捉えることは学術研究の領域でも難しいとされている」と前置きしながら次のように瀬語った。
「例えば、デベロッパの起業や雇用が増えたという“アウトプット方向”の指標だけで効果を計ることは困難。アプリ開発の周囲に集まる人々の活動が賑わい、その中から魅力あるアプリやサービスが誕生していることにも注目すべき。そう捉えると、App Storeがデベロッパのインプット(間口)の可能性を広げたことをポジティブに受け止めることができる」
香港科技大ビジネススクール 川口康平助教授
アップルは先のプレス発表の中で、2020年から始まったコロナ禍以降、App Storeから発信されるイノベーティブなアプリやサービスが人々の健康維持、リモートワーク、エンターテインメントなど様々な課題の解決をもたらし、豊かな生活を支えたとも言及している。
世界的なパンデミックの中で、デジタル経済が人々の行動様式の変容を促したり、あるいは健康的な生活を支えることに直接的な影響を及ぼすこともあるのだろうか。
川口氏は、「現時点でその成果を調べることは難しいが、コロナ禍の影響によりオンラインコマースやコミュニケーションツールの需要が伸びて、サービスの改善が図られたことで人々の役に立っている」と見ている。