As Mobile Economist at TUNE, I forecast and analyze trends affecting the mobile ecosystem.

左から、アップルCEO ティム・クック、テスラCEO イーロン・マスク(photo by Getty Images)

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のティム・ヒギンス記者の新刊「パワープレー:テスラ、イーロン・マスク、そして世紀の賭け(Power Play: Tesla, Elon Musk and the Bet of the Century)」が注目を集めている。この書籍には、2016年にアップルがテスラを買収しようとしたが、イーロン・マスクが合併後の会社のCEOになると主張したため頓挫したと書かれている。

アップルの現在の時価総額は2.4兆ドル(約263兆円)を超えているが、仮にティム・クックがマスクの提案を受け入れていたら、同社の価値は3兆ドル以上になっていたかもしれない。

イーロン・マスクは7月30日のツイートで、ヒギンズの著書の内容を否定したが、興味深いことを付け加えている。クックはマスクと会うことを拒否したという。

「クックと私は、これまで一度も話したこともテキストをやりとりしたこともない」とマスクは述べている。「ある時点でアップルによるテスラの買収について話し合うため、私がクックに面談を要求したことがある。買収条件の提案は一切なかったが、彼は会うことを拒否した。当時のテスラの時価総額は現在の約6%だった」

テスラの現在の時価総額は約6800億ドルで、ピーク時の約9000億円ドルからは下がっているものの、同社が製造キャパシティの拡大に苦慮していた2016年当時の400億ドル前後を大きく上回っている。

つまり、その差額は6400億ドルに達することになる。自動車業界への進出を狙うアップルはその後、数年間にわたりこの分野に投資してきたが、プロジェクトの停止やスタッフの流出を経て、まだ具体的な形にできずにいるのが現状だ。

絶頂期にある巨大企業のCEOが、苦境にあえぐ企業のトップとの面談を拒否する理由はいくらでもある。クックがマスクに会ったからといって、買収につながったかどうかは定かではないし、仮に買収が成立していたとしても、両者の間には対立が生じたはずだ。

しかし、今になって考えるとアップルが巨大なチャンスを逃してしまったことは明白だろう。テスラはその後、見事に復活を遂げ、世界で最も時価総額が高い企業の1社に成長しているのだから。

筆者が察するにクックは今頃、「あの時、別の決断をしていれば」と思っているのではないだろうか。

編集=上田裕資

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