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──初めて3DCGで制作したのはいつですか?

去年東京の「same gallery」で行われた「盗めるアート展」に参加した時です。ロックダウンで外に出られず、ベルリンにいるから協力してくれる人も少ない。その中でキャンバスにポートレートという典型的な「アート」っぽいものを作りたかったから、自分自身を被写体にしてそこにCGを合成していくという自己完結できる方法で作ってみて、もし失敗したらショボい作品を展示することになってしまうっていうヤバイ状況を用意して「やるしかねえ」って自分を追い込んだことですね。

そうすると、意外とできたし、個人的にも面白かった。だから見たいものを見る手段として3DCGをやってみたら、「この世に存在しないものを作れるじゃん」って気づきました。

平野正子 parcel
東京・日本橋のギャラリー「PARCEL」で開催中の展示会への出品作品

──写真を撮らずとも自分がやりたい表現を実現できると?

そう。「この世の中に存在しないものを作れる」って超楽しいんです。いまは3Dプリンターがあるから、この世に存在しなかったものをある程度ディスプレイ内や紙への印刷だけにとどまらず立体物として存在させることもできる。そのこと自体がなんかすごくいいな、と。

ベルリンに来てから個人的にのめり込んでいた陶芸などのプライベートプロジェクトは、結果的にセラピーとして自分のうつと向き合う行為だったけど、3DCG表現自体は、好きなものを作ることが楽しいという感じですかね。あと、ソフトが高いから、買ったからには極めるしかない。仕事の内容によっては、使わない時は使わないし、前回の制作から時間が経っちゃうこともある。ただやればやるほど、できることがどんどん増えていって楽しいなという思いがありますね。

──表現の幅は広がりましたか。

広がりましたね。昔はフォトストックからコラージュしたり、実際にプロップを組んでビジュアルを撮影したり、グラフィック用の素材の撮影をしたりしていました。だけど、私の場合なるべくオリジナル素材を作りたいって思っちゃうから。

カメラって画角とかレンズのサイズが決まってて、この画角だとここまでしか撮れないとか制約がある。3DCGの場合だと、レンダリングして書き出したり、ここに毛が生えててほしいと思えば足せたり、思いのまま表現できるのが最高ですね。

──今年に入ってから水原希子さんがプロデュースするAmazon Primeの番組「キコキカク」のオープニングムービーやタイトル、キャラクターなどの制作やバンドDYGLのアルバムジャケットも3DCGでやられていますね?

そうですね。二つとも割とやりたいことをやらせてもらえました。「キコキカク」では、3DCGに加えて今までやってこなかったムービーまでできて。DYGLのアルバムジャケットビジュアルもMVも担当させてもらいました。DYGLチームとは彼らのイメージのヒアリングをして意見交換しつつ、結果的に私のことを尊重して、信用してくれて、出してみたものをかっこいいと言ってくれたし、自分でも満足のいくジャケットになったのが嬉しいです。

キャンペーンビジュアルなどだとどうしても案件単位になってしまうなかで、DYGLに関しては半年以上並走して一緒にものづくりができました。自分としてやりたい方向性で少しずつ道が開けてきた感じがしますね。



ディレクターを担当したDYGLの「Half of Me」のミュージックビデオ

文=冨手公嘉 写真提供=平野正子

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