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──早くから東京のグラフィックデザインの世界で活躍してきた中で、海外移住を決意した理由とは。

「誰と何をやったか」「誰とつながっているか」という関係性の中でステップアップしていく雰囲気に疑問を持っていたことが一つの理由。もう一つは商業的な仕事をすることに身を捧げすぎないようにしたかったんです。

このまま東京で活動を続けていけば、30歳を過ぎた時に「やっと俺の時代が来たぜ」みたいになれるんじゃないかなっていう直感がありました。そうなった時に「楽しいからずっと(東京に)いちゃうじゃん」って思って。だったら早い段階で出たほうがいいなと。仮に20代中盤で失敗しても、戻ってくる当てはある。むしろ30歳になって海外に出てから失敗する方が痛手がある気がして、26歳で出てきました。

──そもそもベルリンを選んだのにはどのような理由がありましたか?

ベルリンだと、ヨーロッパの都市の中では物価が安く経済的な圧迫を感じないので、家も無理なく広い場所を借りられて、自分と向き合いつつ制作できる環境がある点ですね。

実際にスタジオ兼居住空間も59平米で光熱費やネット代込みで10万円以下で借りられました。ロンドンとかパリといった都市で、経済的に自立した上で制作環境を整えるためには、東京以上に頑張らないといけないと思うので、制作環境を整えるべく海外に向かうのに、本末転倒になる気がしたので。

平野正子
ベルリンのスタジオで作業する平野正子

──実際に2019年に移住されてからどうでしたか?


もう銭失いでしかないです(笑)。去年、パンデミックもあって経済的な面とか社会的なつながりとか、色々失った気はします。でも特にそれによって不安になったり、「ああもうだめだ。これは日本に帰って立て直さないと私はやってけない。ベルリン来たのは失敗だった」みたいにはまったく思わなかったです。

得たものとして、過去の問題と一人で向き合えたことで15年も続いていたうつが劇的に快方に向かったし、時間ができたことで新たな表現手法として勉強し始めたCGが楽しくなったというのが大きいですね。

──他にベルリンに来たことで感じるメリットは。

ベルリン在住の外国人アーティストにスタイリング、メイクアップ、グラフィックなどのコラボレーションの依頼ができることですね。日本にも外国人のアーティストはいるけど、どうしても数が限られてしまう。

ベルリンはパリやロンドンに比べたらバリバリ活動している人たちがいる、という状況ではないですけど。大きなクライアントと仕事をしながらも、アンダーグラウンドシーンとの接点を持つアーティストや、ローカルコミュニティを出発点としながらもメインストリームでも支持を受けていくような強さを持つ若手アーティストたちと交流を広げることができるのは可能性を感じますね。

見たいものを見る手段として


──最近になって3DCG表現を始めるようになったきっかけはなんですか。

今までやってこなかった理由として、美大予備校時代に、時間制限内にデッサンを描く授業があったんですけど、自分は立体把握能力があまりなくて、それが苦手で。「デッサン力もないのに立体なんて絶対作れないよ」という先入観があって手を出してなかったんです。ただコロナ禍に時間ができたのと、やっぱりCG自体が面白そうだからやってみたいなと思っていたので。始めてみたら意外と全然できるじゃんという感じになって。

文=冨手公嘉 写真提供=平野正子

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