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2021.08.01

米国人を監視するイスラエル企業「パラゴン」の謎めいた実態

Getty Images

イスラエルのテルアビブを拠点とする監視テクノロジー企業「パラゴン・ソリューションズ(Paragon Solutions)」は、50人以上の従業員を抱えているが、公式ウェブサイトは存在せず、その活動の実態は謎に包まれている。

しかし、同社の経営陣や投資家には目を見張るような人物がそろっている。共同創業者のEhud Schneorsonは、イスラエルの諜報機関「8200部隊」の元司令官であり、CEOのIdan NurickやCTOのIgor Bogudlov、研究部門のLiad Avrahamらも同じ機関の出身者だ。

さらに、元イスラエル首相のエフード・バラックも取締役に名を連ねている。パラゴンには、米国の大手ベンチャーキャピタルのバッテリー・ベンチャーズが出資しており、関係筋によると、その金額は500万ドルから1000万ドルの規模だという。

パラゴンのプロダクトは、スパイウェアや監視テクノロジーの専門家たちを唸らせるものだ。同社は警察に、ワッツアップやSignal、フェイスブックメッセンジャー、Gmailなどの暗号化されたメッセージの解読を可能にするツールを提供している。

2019年に設立されたパラゴンは、同種のスタートアップが激しい非難を受けている中で、静かに勢いを増してきた。先日は、イスラエルで最も有名なスパイウェアプロバイダーのNSO GroupのPegasusというツールが、ジャーナリストや弁護士、政治家のスマホのデータを抜き取っていたと報道された。

Pegasusは、殺害されたジャーナリストのジャマル・カショギの妻や、フランスのマクロン大統領のデータにもアクセスしたとされている。

パラゴンの幹部の一人は、フォーブスの取材に、プロダクトについては話したくないとコメントし、顧客はまだいないと述べた。しかし、NSOが直面したようなトラブルを避けるために、パラゴンは「人権と自由を尊重する国家のみを顧客とする」と、この幹部は述べている。

関係者によると、パラゴンのスパイウェアは、エンド・ツー・エンドで暗号化されたアプリの脆弱性を利用してメッセージにアクセスするという。リンクトインのプロフィールによると、同社のスタッフには、かつで米国のNSO(国家安全保障局)のオペレーションを担当した人物や、ハッキングカンファレンス「Def Con」で、論文を発表した研究者が含まれている。パラゴンは、米国のVCの出資を受けて、米国の法執行機関への侵入を試みている模様だ。

バッテリーベンチャーズは、2019年9月に2つのVCを通じて、パラゴンに出資を行っており、同社の副社長のアーロン・リンバーグはパラゴンの取締役を務めている。1983年設立の同社は、コインベースやグルーポン、ポケモンGOを開発したナイアンティックなどへの投資で成功を収めている。
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編集=上田裕資

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