イスラエルのみならず、あいつぐ「デルタ株隆盛」の報を受け、追加免疫獲得のための3回目接種(ブースター接種)の必要性がささやかれ始めている。
国内の「婚活」市場では、マッチングアプリで「ワクチン接種済」がアピール材料になる、という報道もあるが、今後、抗体を無事獲得して新しい日常に臨むために、われわれが注目しておかねばならないことは少なくなさそうだ。
追撃の2回目、変異種「決め打ち」の3回目?
米ニューヨークタイムズ紙がポッドキャスト配信する番組「The Daily」によれば、「ブースター注射(追加免疫用ワクチン)」には2種類あるという。
1つは1回目とまったく同じ成分のワクチンだ。ファイザー社によると、90%の効果だったワクチンも、接種からの経過時間とともに〜70%にまで落ちることがあるが、追加接種により本来の90%に戻す効果が期待される。
もう1つはデルタ株などの変異種を「決め打ち」するために特別に作られた、3回目専用の、いわば「変異種株用ワクチン」だ。
英ガーディアンによれば、ファイザー社は、3回目接種用のワクチンを追加免疫獲得用として公的に認めるようFDAに要請した。これを受けてFDAはCDC(アメリカ疾病予防管理センター)とともに、3回目接種が必要かどうかを判断するにはデータ不足である、今後の調査を待って判断すると発表した。
2回の接種で抗体獲得は完了すると考える専門家もおり、高額なワクチンの追加獲得に多大な予算を割くことをとりあえずは保留した形だ。
「手遅れ」になる可能性も
米CNBCによると、ファイザー社アルバート・ブーラCEOはすでに4月1日に、2回目接種が終わってから12カ月以内に3回目の追加免疫獲得用ワクチン接種が必要であると思われる、と話していた。ブーラCEOはまた、パンデミック収束後も、年に1回のワクチン接種が必要になるだろうとしている。
ファイザーをはじめとする製薬会社各社と政策調整側とのにらみ合いが続きそうだが、専門家の中には「データ不足を理由に判断を保留したため、手遅れになる可能性」を指摘する筋もある。
──日本では1回目未接種、という50代以上もまだ多い。そんななか厚生労働省は7月30日、アストラゼネカ製ワクチンの40歳以上への公費接種を決定したと発表した。同社製ワクチンは、海外で接種後に血栓症などの副反応が報告されているため使用が見合わせられていたものだ。
厚生労働省は同日、早ければ2022年初め、モデルナと武田薬品工業からワクチン5000万回分の追加供給を受ける契約を結んだとも発表しているが、今後「3回目が必須」との判断に足るデータが蓄積し、世界各国がその調達にしのぎを削り始めたとしたら──。国内における「安全性の高い」3回目用ワクチン接種が実現するかは、気になるところだ。