劇場へ思いを馳せ、気持ちが華やぐ服を
コラボアイテムの開発は、コロナ禍のためオンラインではあるが両社でじっくり話し合ってテーマを固め、大河内が中心となってデザインや製作などのディレクションを手掛けた。エンタメとファッションという異業種コラボとあって、テーマを固める際は、お互いの思いを共有することに重きを置いたという。
テーマは、身に付けることで劇場へ思いを馳せたり、劇場へ出かける気分をいっそう華やかにしてくれる服。観劇に彩りを添えてくれるようなエレガントなテイストで、男女それぞれのアイテムを作りたいというのが劇団四季の希望だった。
大河内自身は日常的に観劇する習慣がなかったため、劇団四季やファンについてヒアリングしたり、劇場の外観や内装をリサーチしながらデザインのイメージを膨らませていった。その中で大河内が面白いと感じたのが、昼公演を意味する「マチネ」、夜公演を意味する「ソワレ」というフランス語源の言葉。
そこで、「マチネ」と「ソワレ」それぞれをイメージし、劇場の赤い絨毯や座席に映えるようにイエローとネイビーの2色展開をすることにした。女性向けアイテムはマーメイドスタイルの巻きスカートを、男性向けアイテムはネクタイを提案。巻きスカートもネクタイも「renacnatta」で定番のアイテムだが、劇場の雰囲気や今回のテーマに合わせて華やかなデザインを目指した。
夜公演を意味する「ソワレ」のスカート
フリンジ生地で播州織の魅力を引き出す
播州織は、兵庫県西脇市で200年以上続く織物産業。先に染めておいた糸で柄を織る「先染織物」という独自の製法を用いることにより、鮮やかな色彩や自然な風合いの生地に仕上がるのが特徴だ。一般的に綿生地でシャツやストールなどに加工されることが多く、実は日常の身近なところに播州織の製品はある。
だからこそ、多くの人が見慣れた綿生地をコラボアイテムに使っても特別感を出すのは難しいと大河内は考え、播州織で作られる生地の中でも特徴のあるものを探した。流行り廃り関係なく、幅広い年齢の人に身に付けてもらうためにも、形はシンプルで生地に特徴があるアイテムに仕上げたほうがいいという考えもあったという。そしてようやく見つけたのが、播州織の織元企業である『丸萬』が手掛けるフリンジ生地だった。生地にフリンジを織り込むのは高度な技術を要するという。
「立体感のあるフリンジ生地を生かして、劇場の緞帳をイメージした幾何学模様のデザインを施すことを思いつきました。それなら生地自体に特徴を出すことができるし、幾何学模様を2色の糸で表現することで播州織ならではの鮮やかな色彩も伝わるのではないかと思ったんです」
フリンジ生地には劇場の緞帳をイメージした幾何学模様のデザインを