発掘は謎解き 知られざる「水中考古学者」の魅力

撮影=藤井さおり


山舩は船舶を専門とし、ギリシャやクロアチアを主戦場に発掘、研究を行っている。普段は大学の研究員や自身が持つ会社の経営をしながら調査依頼を受け、1年の約10カ月を海外で過ごす。報酬は案件によってまちまちで、日本の相場は拘束時間10日で50万円ほど。

現場は過酷だ。1つのプロジェクトには時に30人以上が参加する。アパートを借りて1部屋に5〜6人が共同生活をすることはざらで、基本的にプライベートな空間はない。ストレスが溜まり仕事にならない人もいたり、チーム内で色恋沙汰が起きたりと、プロジェクトは決してスムーズには進まないという。決して綺麗な海にばかり行けるわけではなく、ドブ川や寒い海に潜ることもある。

だが山舩は「文化祭や修学旅行、体育祭をやっているような感じ。楽しくて仕方ない、幸せ」と話す。

調査の依頼が来ると、下調べはするが、どんなものが発掘されるかは行ってみなければ分からない。

「最初はこんもりとした丘で土に埋まった状態。徐々に掘っていくと、次第にその姿を現し始める。何が出てくるのかを想像しながら掘り進めることは、謎解きを水中でやっているという感じ。思ったものが出てきても嬉しいし、外れても面白い。水中作業をして、その答え合わせをしているときが研究者として一番面白い」と話す。

山舩晃太郎
撮影=藤井さおり

現在37歳の山舩。先輩や後輩、同級生にはプロ野球選手になった人もいる。

「変な話、野球の才能がなくてよかったと思う。プロに行った人には、私の年齢でもう引退している人もいる。でも、研究者は息が長く、私は研究者としてまだまだ若手。50〜60代で働き盛り、70〜80代で大御所なので、本当に死ぬまで研究できる。今回この本を通して、この面白さと存在を、なるべく多くの方に知ってもらえたら嬉しい」

文=露原直人 写真=藤井さおり

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