観光客が野生動物に触り、住民から批判殺到
騒動の発端となったのは、新婚旅行でハワイを訪れていた米ルイジアナ州のカップルがSNSに投稿した動画だ。2人は2021年6月、ハワイのマウイ島で結婚式を挙げ、そのまま同じハワイ州内のカウアイ島に新婚旅行に出かけた。そこで、ビーチに寝そべるハワイアンモンクシールに遭遇。妻がモンクシールの体に触れ、その様子を夫が動画で撮影し、TikTokに投稿した。
ハワイアンモンクシールはハワイ固有種のアザラシで、現在およそ1400頭しかおらず絶滅危惧種に指定されている。このような絶滅が危惧される野生動物は連邦法や州法で保護されており、アメリカ海洋大気庁(NOAA)は、ハワイアンモンクシールに触ることはもちろん、エサやりや追跡することも禁止し、遭遇した場合は15メートルの距離を取るよう推奨している。
しかしその動画では、妻がビーチでくつろいでいたハワイアンモンクシールの体に触り、それに驚いたモンクシールが彼女を威嚇して噛みつこうとしている様子が収められている。
ハワイでは、ハワイアンモンクシールが絶滅危惧種であることはよく知られている。観光客の数がカウアイ島よりずっと多いオアフ島のビーチでも、ハワイアンモンクシールが現れることは珍しくない。だがそのたびに人々は一定の距離をとり、彼らがゆっくりと過ごせるように見守り、現地メディアでもほのぼのとしたニュースとして、そののどかな様子を紹介している。
ハワイアンモンクシール(GettyImages)
TikTokに投稿された動画を見ると、この夫婦は悪ふざけで危害を加えようとしているわけではなさそうだ。だが、自然や野生動物を守ろうとするハワイの人々の間で、この動画に対して批判が高まり、一気にSNS上で拡散。妻のアカウントには、生命の危険を感じさせる脅迫のコメントまで届くようになったという。ついにはこの騒動を受け、NOAAが動画について調査することとなった。
連邦法とハワイ州法によると、絶滅危惧種に関する法律に抵触した場合、最大5年間の懲役または、最大5万ドル(約550万円)の罰金刑が科せられる。2018年には、アラバマ州の男性がハワイアンモンクシールとウミガメに触った動画をInstagramに投稿し、1500ドル(約16万5000円)の罰金を支払った事例がある。
現地メディアの取材に対し、この夫婦は「ハワイの人々に不快な思いをさせたことを、深くお詫びしたい」と、反省の意を述べている。NOAAの調査の結果、金額は非公開だが、夫婦には罰金の支払いが命じられ、この騒動はようやく収束を迎えた。