多くの問題は生物学で解決できる。新興バイオ企業「Zymergen」の挑戦

(c) Zymergen

現代の製造業は200年の間、本質的に変化していない。化石燃料は燃やされたり、他の素材に作り替えられたりして高層ビルから携帯電話の画面まであらゆるものに使用されている。

科学者や起業家らは現在、より新しい持続可能な未来を設計すべく自然の中で最も古い成分を見直している。自然を活用することで、企業は曲げても壊れない携帯の画面や、ゴミを便利なものに変える微生物など、新たな性質を持つより良い商品を作ることができるのだ。

微生物を活用した製品を開発する新興バイオ企業、ザイマージェン(Zymergen)は、このプロセスを「バイオファクチャリング」と呼ぶ。バイオファクチャリングとは、新たな遺伝的指令を持つ微生物を使い、新たな素材を作るものだ。

21世紀に必要な持続可能性


同社の共同創業者で最高科学責任者(CSO)のザック・サーバーは「私個人、またザイマージェンで働く人の目的は、世界をより持続可能なものにすることだ」という。

持続可能な生活のためには、現代のぜいたくさを諦める必要があると考える人が大半だが、ザイマージェンはサステナビリティを実現しつつ商品を楽しむことは可能であることを示し、現状を変えようとしている。サーバーは、環境に優しい商品にするために品質と機能を犠牲にすることはできないと明確にしている。

「サステナビリティに加え、顧客の多くが当社の商品を求める理由は優れた性能にある」とサーバー。ザイマージェンは現在10の商品を開発中で、これらは今後発表予定だ。

ザイマージェンは昨年、発酵により作られた世界初の電子製品の一つとして「ヒアリン」を発売した。ヒアリンは透明なポリイミド薄膜で電子製品に使用でき、機械的強度や光学的透明度、耐温度性を備えている。

「ヒアリンは透明で、信じられないほど耐久性があり、柔軟性がある。生物学のおかげで、私たちはより良い再生可能なフィルムを作ることができる。ヒアリンは簡単に折り曲げたり巻いたりでき、携帯電話やタブレットの画面として使用できるし、銀ナノワイヤを埋め込んだタッチスクリーンにもなる」

より安全な虫よけも


ザイマージェンが注力するのは電子製品だけではない。同社は2023年に、無毒な虫よけ商品の発売を計画している。

新たな商品は従来の虫よけと違い、石油由来ではない。虫よけとして使われることが非常に多い成分にはディート(DEET)があるが、哺乳類には有毒なため慎重な使用が必要だ。しかし、ザイマージェンの虫よけは、害がなく自由に使える。さらに、虫よけを日焼け止め剤と組み合わせて1つのボトルにするなど他の商品と組み合わせた配合もできる。
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翻訳・編集=出田静

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