Google DeepMindの新発表はバイオ領域のロゼッタストーンになる

先日、バイオや医療の世界に革命を起こすであろう大成果をDeepMindが発表しました。同社はタンパク質の立体構造をDNA情報から高精度で予測できるAIを完成させ、それを活用することでヒトのプロテオーム(ヒトを構成する全てのタンパク質)を最も完全かつ正確に網羅したデータベースを完成させたのです。言うなれば、バイオ界の長年の謎を紐解く「ロゼッタストーン」を作り出したようなもので、ヒトゲノムの完全解析に成功して以来の飛躍的な進展です。

タンパク質はアミノ酸から作られていて、筋肉などの組織や酵素、抗体など、生物にとって重要な様々な部分を構成しますが、その設計図となるのがDNAです。個々のタンパク質の機能を理解するためには、その構造の解明が欠かせません。

しかし、DNA情報からどのような形のタンパク質が作られるのかを理解し、予測するのは非常に難しく、科学者たちにとって長年の課題となっていました。

従来の方法では、1つのタンパク質の立体構造を解明するために、場合によっては何カ月から何年もかけて研究室で実験を重ねる必要があります。そのため、ヒト以外の生物も含めて1億以上ものタンパク質の存在が確認されている中、現時点ではまだ18万ほどしか立体構造が解明されていません。

そこに現れたのが、DeepMindの開発した立体構造予測プログラム「AlphaFold」です。同プログラムにより、AIを使えばタンパク質の立体構造を数分で、しかも大量に、分子レベルまで正確に予測できることが証明されたのです。

さらに、DeepMindは世界中の人たちがAlphaFoldを活用して改良できるようにプログラムをオープンソース化し、データベースも無料で公開しました。

同データベースではヒト以外にも20種類の生物のタンパク質情報が公開されていて、現時点で35万のタンパク質の立体構造が登録されています。加えて、これから数カ月の間に登録数を1億以上にまで拡大し、現在知られている全てのタンパク質を網羅する予定だそうです。
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文=James Riney

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