経済・社会

2021.07.30 08:30

平常時にもどるのは10月末か? ポストコロナの社会経済


秋からは、ブロードウェイのミュージカル、オペラ、コンサートなども定員いっぱいの公演を予定している。入場時にワクチン接種証明(ニューヨーク州のエクセルシオ・パスというスマホに入るQRコード)の提示が求められるようになるかもしれない。いまは専用のアプリに必要情報を入力すると、QRコードを入手できる。ヨーロッパ連合(EU)では、域内の旅行に必要な各国共通のワクチンパスポート(QRコード)が7月1日から運用されている。

翻って日本では、ワクチンパスポートは、7月26日から市町村で、パスポートを持っている人に限り、紙による発行が開始した*。世界のデジタル化の流れに大きく遅れていることが心配される。ワクチン接種を開始する前に、すでに証明書発行のことを考えておくべきだった。

各国の経済活動がマスクや営業時間の制約のない平時の生活に戻るためには、ワクチン接種による集団免疫の獲得が欠かせない。今後は、ワクチン接種の進捗とGDP成長率が相関を強めることになるだろう。日本が、いまのニューヨークのような平時の状態に戻るのは、10月末になると予測される。

ポストコロナの世界が、コロナ以前のノーマルなのか、コロナに振り回された1年半に学習したリモート勤務、リモート学習を組み合わせたニューノーマルなのかは、意見が分かれている。大学の授業は対面型に復帰するものの、ゲストスピーカーやセミナー、コンファレンスは対面である必要はなく、リモートでより適切な参加者を招くことができる。(7月4日記。*ワクチンパスポートの進捗のみ7月29日に更新)


伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学客員教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002~14年東京大学教授。近著に『Managing CurrencyRisk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2ndEdition、共著)。

文=伊藤隆敏

この記事は 「Forbes JAPAN No.085 2021年9月号(2021/7/26発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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