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「スマートシティでは、トップダウン型とボトムアップ型の併用でやっていかなければいけない。そのためには、はっきりとしたビジョンを示すことが重要です。20〜30年後、このような方向でいきましょうという目指すべき姿。ただ、その際に、肝になるのは『細かいことを決めすぎない』こと。次世代の人たちの意見をどんどん入れながら、検証や改善を繰り返しアジャイルに推進することが大切です」と中村は指摘する。

また、山口も次のように話す。

「ビジョンよりも、もっとぶれないもの。たとえば、人間の根源的な幸福という理念を追求する。地域ごとに異なる幸せを実現することが『デジタル田園都市国家構想』だと思うんです。住民基本条例等に照らした意見募集や対話を通じ、たくさんの人の意見を聞きながら定めるべきでしょう。そして、その理念に賛同する企業にご参加いただく。大切なのは市民で、課題の抽出から解決までを彼らの手で完結できるような環境をつくりたい。それこそが私たちが目指す『ローカルSDGs』です」

あらためて、データ、デジタルは都市に何をもたらすのか。

中村は、会津若松での10年間の経験をもとに次のように振り返る。「データを使って、人の位置情報などをうまく活用できていたら、いまだに被災した方の遺体が2600体も上がっていないということにはならなかった。もっと救えた命もあったはずです。だからこそ、デジタルを国民が受け入れることで、次なる危機が起こったときに、対策が事前に打てる国になれる。また、命の救済にデジタルが貢献できるようになる。そんなことをここ会津若松で証明してみたい」。

山口の意見はこうだ。「デジタル技術の浸透が目的ではないんです。アナログサービスのあり方と、その質を高めて寄り添うことが目的だということを忘れてはならない」。

つまりは、人々の、人々による、人々のためのデータ・デジタル化である。企業や組織も同じであろう。定量的データのみならず、人々の感情、意思、希望という定性的データをも反映されているということが実感できる。そんな環境がひいては、個々人の幸福度を高めていく第一歩となっていくのだろう。

INTERVIEW 4

ビルバオを変革した美術館「集団の知恵で共創する」


マヌエル・シラウキ グッゲンハイム美術館

なぜ、リーダーはじめ、人々はいま、アートに「解」を求めるのか──。

これは、これからの組織づくりにおいても有効な問いになりえるだろう。「現代におけるアートの役割は、変化・進化の激しい時代のなか、創造性や想像力の重要性を示唆することにあると思います」。世界でも屈指の美術館といわれるスペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館でキュレーターを務めるマヌエル・シラウキは言う。

アートとは、現社会において、我々が持ち合わせていないモノのとらえ方や、新しい世界とのつながり方、そして、理解の仕方を提示してくれる、未来への道標のようなものだ。

GDP(国内総生産)至上主義経済を追いかけてきた数十年。私たちは合理性を追求してきた。その結果、企業は、社会は、人々を幸せにしただろうか。

まさしくそこが、私たちがいま、アートを希求するところの理由の一つでもある。「アートは、私たちは何者なのか、どういう存在であるのかを考えるきっかけを与えてくれるものであり、また、どんな世界にもなれるという可能性を直接的な体験によってもたらしてくれるものです」。

文=谷本有香

スマートシティ

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