新型コロナの「偽ワクチン」流通 ブロックチェーンの対策で防げるか

偽造医薬品の流通が年々増加している(Shutterstock)

全世界の医薬品の10%以上は偽造品であると言われており、昨今では新型コロナワクチンの偽造品も流通しています。世界経済フォーラムのアジェンダからご紹介します。


・世界各国で、偽物や誤解を招くような表示のワクチンの販売が報告されています。
・新型コロナウイルスのワクチンの偽造品は、世界的に急増している偽造医薬品流通の一種であり、公衆衛生に深刻な脅威をもたらします。
・ブロックチェーンを利用したトレーサビリティシステムは、安全認証ラベルと組み合わせることで、医薬品の認証に使用できる可能性があります。

過去には、通貨、美術品、さらにはワインまで、偽造品のターゲットとなっていました。現在、狙われているのが新型コロナウイルスのワクチンです。7月、CNNの報道によると、インドでは、何千人もの市民が新型コロナウイルスの偽ワクチンの詐欺被害に遭い、詐欺行為に関与した医師や医療従事者が逮捕されました。

金融の中心であるムンバイとその近郊で、少なくとも、12回の偽ワクチン接種が行われました。アストラゼネカ社製のワクチン接種を受けた約2500人は、実際には生理食塩水を注射されているにもかかわらず、正規のワクチン料金を支払っています。その数日前に当たる6月にも、ロシアのガマレヤ(記念国立疫学・微生物学研究センター)製と偽ったワクチンを使った大規模な偽ワクチン接種がタイムズ・オブ・インディア紙によって明らかにされています。

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェソス事務局長は、新型コロナウイルスの偽造ワクチンがダークウェブで売買されているという警告を、3月にすでに発していました。医薬品の偽造は、組織犯罪の一部として年間20%という驚異的なスピードで増加しており、世界に大きな影響を与えていることが改めてわかります。

2017年当時、PwC(プライスウォーターハウスクーパース)では、市場規模を控え目な予測で2000億ドルとしていました。全世界で流通している医薬品の10%以上が偽造品であり、一部の低所得国では、患者に投与される医薬品の偽造は50%以上と言われています。インターポール(国際刑事警察機構)によると、これにより年間100万人以上の死者が出ており、これは、自殺や違法薬物の乱用による死者数を上回る数です。

他の国でも、パンデミック(世界的大流行)を利用した同様の犯罪が多発しています。4月、ファイザー社は、メキシコとポーランドで新型コロナウイルスワクチンの偽造品を確認したと報告しました。2021年1月以降、メキシコの医療機器規制機関、COFEPRISでは、アストラゼネカ、カンシノ、モデルナ、シノヴァク、シノファーム、ファイザーの新型コロナウイルス偽ワクチン対して、ヘルスアラート(健康危機警告)を6回発令しています。(シノファームとモデルナ製ワクチンは、現地では、公式には入手できません)。

アメリカやイスラエルのようにワクチン接種が広く普及している国でも、ワクチンの空瓶(バイアル)をCraigslistやeBayで販売する悪徳医師や薬剤師が摘発されており、この問題に無関係な国はありません。1度に数十本も購入するバイヤーがいることを考えると、空瓶の購入目的が博物館の展示用だと信じる人がいるでしょうか?検索をかけてみれば、すぐに実例が見つかるはずです。

偽ワクチン
eBayで取引される新型コロナウイルスのワクチンの空瓶
次ページ > 偽造ワクチン流通を防ぐ2ステップの対策

文=Arnaud Bernaert, Head, Health Security Solutions, SICPA

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事