新型コロナの「偽ワクチン」流通 ブロックチェーンの対策で防げるか

偽造医薬品の流通が年々増加している(Shutterstock)


悲しいことに、この事態は予想できたことでした。2021年から2022年にかけて、売上高が1500億ドルに達すると言われる医薬品が記録的な速さで市場に出回れば、犯罪者のレーダーが反応しないわけがありません。

GAVI(GAVIワクチンアライアンス)、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)、ユニセフなどが、公平なワクチン接種のイニシアチブであるCOVAXを支援するため、多大な努力を重ねているにも関わらず、新型コロナウイルスのワクチンの不正取引により、他の医薬品と同等レベルの偽造が行われているという絶望的なシナリオが待っています。ワクチンの10%、20%、あるいはそれ以上が偽物であれば、世界が集団免疫を獲得することはほぼ不可能です。

ユニセフでは、このような事態が発生することを十分理解しており、現在、ブロックチェーンベースのソリューション「グローバル・トラスト・リポジトリ(GTR)」の開発のための入札を行っています。新型コロナウイルスの正規ワクチンの偽造や違法な転用は、現実的な脅威となっています。偽ワクチンは公衆衛生や経済に影響を与え、信頼を損ない、新型コロナウイルスのワクチンの需要や接種に対する抵抗感に影響を及ぼす可能性があるのです。

偽薬
世界的な問題である偽造医薬品(イメージ: Stibo Systems)

COVAXがサービスを提供している92の低・中所得国の大部分には、新型コロナウイルスのワクチンを追跡・検証する国家的なトレーサビリティシステムが存在しないため、GTRの設立は朗報と言えるでしょう。こうしたシステムが存在しない92の国に対しては、検証ソリューションが提示されています。

このソリューションは、正規のサプライチェーンにある新型コロナウイルスのワクチンパックをスキャンして検証を行うことができます。つまり、固有のシリアル製品コード番号が、製造者が独自に生成した製品コードのブロックチェーンで保護されたリポジトリと比較されることになります。

これにより、多くの偽造製品が特定され、サプライチェーンから排除されることになるでしょう。ただし、残念ながら、ここで排除できるのは偽造製品のごく一部に過ぎません。莫大な利益に対する犯罪者の欲望を、この第一ステップで完全に阻止することはできないでしょう。グローバル・ファイナンシャル・インテグリティによると、医薬品偽造は、多国籍犯罪の中でも最も利益の大きい市場だということです。また、国際偽造医薬品研究所では、麻薬密売の10倍から25倍の利益が上がるとしています。

ラベルの改ざんに対抗するため、医薬品メーカーは最終的には一次包装に不可視ラベルのようなセキュリティ機能を組み込むものと予想されます。この第二ステップの取り組みは、銀行が偽札製造防止のために行っている透かしや、政府が物品税を完全に徴収するためにタバコの箱に印刷するマークと、原理的には変わりません。物理的な製品とそのデジタルツイン(デジタル複製)のつながりを強化することが、最終的にワクチンの偽造業者に打ち勝つことになります。この第二ステップの推進こそ、製薬業界がユニセフのタイムリーなイニシアチブをより良く支援するためにできることです。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Arnaud Bernaert, Head, Health Security Solutions, SICPA

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