この本を読んだ後、私は危機感と希望の両方をいだきました。
「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロ」という目標まであと30年足らずだというのに、私たちはいまだに状況をほとんど改善できていません。紙のストローに替えたり、レジ袋をやめたりすることで「やった感」は出るかもしれませんが、そのような些細な取り組みだけでは2050年までに間に合うはずがありません。
もっと飛躍的な変化をもたらし、目標に一気に近づけるようなソリューションが必要なのです。その鍵となるのが、革新的な科学やテクノロジー、そしてより良い未来へつなげようと実現や実用化に向けて日々奮闘している人たちの貢献であり、それらの成功に私たち人類の命運がかかっているのです。
その点で、現在進んでいる電気自動車へのシフトは非常に大きな前進です。しかし、実はクルマなどの移動による温室効果ガスの増加は全体の16%にしかすぎません。人間の社会活動で大半の温室効果ガスを排出しているのは、上から順に「製造(セメントや鋼鉄、プラスチックなど)」、「電力の消費」、「農業(農耕や畜産)」、「移動(クルマやトラック、船、飛行機など)」、そして「温度管理(ヒーターやエアコン、冷蔵庫など)」となっています。
実際のところ、テクノロジーや科学に解決策を求めるといっても、実現性やコスト、政治面などでまだたくさんの課題が残っています。
例えば、クリーンエネルギーというと太陽光や風力などが真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、こうした電力源では24時間365日の安定した電力供給を実現できません。また、発電量的にも現在の電力需要にまったく追いついていないという問題があります。