──ビジネスモデルは異なれど、提供する価値の根源は共通している、と
実は、会社経営も同じで、私は経営をしているよりも「GOという作品のクリエイティブをディレクションしている」という意識の方が強いんです。
「どういう風な仕事をしたら世の中からどう見られるか」「どういう人を採用したらどういうアウトプットが生まれるか」など、極めてクリエイティブディレクターと同じ思考回路で、GOという組織を運営しています。
なので幅広く色々やっているように見えるかもしれませんが、自分たちが苦手なことや、やる意味がないことは一つもやっていませんね。
「意味」を作り、価値を高める
──「新しい意味を作ることで価値を増やす思想と技術」について、もう少し具体的にお伺いできませんでしょうか。
ここに「お茶碗」があったとしましょう。このお茶碗の価値を上げることが命題だったとき、どのような手段があるでしょうか。
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例えばもっと良い材質で作ることはできますよね。これは「資源」で勝つやり方。100人で一気に100個量産して生産性を高めるというやり方もあります。これは「組織力」で勝つやり方です。保温機能をつけるといった「技術」で勝つ方法もあります。
しかしここで、「このお茶碗は人生を象徴する品である」と言って、数百万円で売った人がいます。それは千利休です。彼はまさに「意味」をつけることで、ものの価値を高めることをしていたわけです。
さらに具体例を挙げると、私が前職の博報堂にいた頃に「土のフルコース」というプロジェクトを手がけました。
これは園芸用土メーカーがクライアントだったのですが、東日本大震災の原発事故による風評被害で「日本の土はもう扱えない」と言われて、困り果てていたような時期でした。
その時にクライアントに「どれくらいこの土は安全なんですか?」と聞いたら「食品と同じくらいの安全基準を満たしています」とおっしゃったんです。「それは食べられるってことですか?」と聞いたら「そういうことです」と。
そこでフレンチレストランとコラボレーションして「土を使ったフレンチフルコース」を作ってメディアの取材陣に食べてもらいました。そのことで「食べられるくらい安全な土」という報道が広まり、世の論調を変えることができたのです。
これも新しい意味を作ることで価値を高める「クリエイティブ」の使い方です。
「クリエイティブ」という発想法、思考法を使ってものの価値を高めることは、時代を超え、様々な場面で活用することができると思います。
三浦崇宏(みうらたかひろ)◎The Breakthrough Company GO 代表取締役 PR/CreativeDirector。2007年博報堂入社、マーケティング・PR・クリエイティブの3領域を経験、TBWA \HAKUHODOを経て2017年独立。「表現をつくるのではなく、現象を起こすのが仕事」が信条。Cannes Lions、PRアワードグランプリ、ACC TOKYO CREATIVITY AWORDS グランプリ/総務大臣賞など受賞多数。著書『言語化力(言葉にできれば人生は変わる)』(SBクリエイティブ)がAmazonのビジネス書ランキングで1位に。近著に『人脈なんてクソだ(変化の時代の生存戦略)』(ダイヤモンド社)。東京大学、早稲田大学、筑波大学などで講師実績あり。